永住許可制度の適正化と「取消事由」の新設に向けて

Q:報道などで「永住許可の取り消し理由が拡大する」と聞きました。具体的にどのように拡大され、それはいつから始まるのでしょうか?

A:令和9年4月1日から「永住許可の取り消し要件」部分が改正された改正入管法が施行される予定です。
令和7年9月29日に行われた第7回「出入国在留管理政策懇談会」の中で、永住許可制度の適正化についての議論がなされました。その資料が公表されましたので、どのような法改正がどのようなスケジュールで進められるのかを簡単に解説していきましょう。

なお、今回の法改正は、永住者の在留資格に関する「取消事由の追加」の他に、「通報制度の創設」などの制度運用の透明化を目的としています。


改正の背景 ― 「永住者の在留管理をより公正に」

永住者は、在留期間の更新手続を要しません(カードの更新のみでOK)。そのため、永住許可時の要件を後に満たさなくなる可能性があります。例えば、納税や社会保険料などの公的義務を履行しない、法令違反を繰り返すなどの事例です。

こうした一部の悪質な事例が放置されると「適切に在留している多数の永住者への不当な偏見を招くおそれがある」として、入管庁は、永住許可制度の適正化(=要件・取消事由の明確化)を図る方針を示しました。


新たに追加される取消事由(入管法第22条の4)

改正入管法では、永住者に限って以下の2項目が新たに追加されます。

新設された取消事由内容根拠条文
① 故意に公租公課の支払をしないこと税金・社会保険料など「公租公課」の支払義務を認識しつつ、支払能力があるにもかかわらずあえて支払わない場合。第22条の4第1項第8号
② 特定の刑罰法令違反で拘禁刑に処せられたこと刑法や特定の特別刑罰法令により懲役・禁錮刑を受けた場合。過失犯や罰金刑のみの事案は対象外。同第9号

これらの事由は、永住者の「素行善良要件」「日本国の利益に合致する要件」を永住許可後も担保するための仕組みとして導入されます。


判断基準の考え方(ガイドラインで明確化予定)

(1)「故意に公租公課の支払をしない」の判断要素

入管庁は、令和6年6月の国会答弁および懇談会資料において、次の2点を主要な判断要素としています。

  1. 支払をしないことにやむを得ない事情がないこと
     病気・災害・失業等により支払不能な場合は「故意」には該当しない。
  2. 支払義務を認識しながら、あえて支払をしないこと
     支払能力があるにもかかわらず、繰り返しの催告等にも応じないなど、誠実な意思が見られない場合。

「故意」とは、刑法上の故意と同義ではなく、入管法の目的(外国人の在留の公正な管理)に照らした行政的概念として限定的に解釈される。(出入国在留管理政策懇談会資料6頁、令和6年6月11日参議院法務委員会答弁)

(2)通報制度(第62条の2)の運用指針
  • 国または地方公共団体の職員は、職務遂行中に取消事由該当の疑いを知った場合、任意で通報ができる
  • 通報の判断目安(「通報相当」と考えられる事例)として、次のような例が挙げられています。
    • 財産があるのに、繰り返しの催告に応じない。
    • 海外への不相当な送金や不要な支出を行っている。
    • 今後も納付の見込みがない。
  • 一方、以下のような場合は「通報不要」と整理されています。
    • 納税の意思がある(分割納付や相談対応をしている)。
    • 病気・災害・失業などの事情がある。
    • 生活保護受給中で課税対象外。
(3)取消し・職権変更(第22条の6)の判断枠組み

入管庁は、取消事由に該当しても直ちに永住資格を失うのではなく、次のような段階的判断を行うとしています。

  1. 取消事由該当性の有無
     (例:「故意に公租公課を支払わない」要件の充足)
  2. 引き続き在留することが適当かどうかの総合判断
     (生活状況、家族構成、納税意思、社会的定着など)
  3. 適当でないと認められる場合のみ取消し
     その他の場合は、法務大臣の職権により在留資格変更(例:定住者等)を許可。

家族関係・人道上の配慮・再建意思などが認められる場合は、資格変更で対応することもあり得る。(懇談会資料8頁、法務大臣答弁)


今後のスケジュール

  • 令和8年中:ガイドライン策定
  • 令和9年4月:施行・ガイドラインに基づく運用開始予定
  • それまでに、入管庁が以下を実施予定
    • ガイドライン素案作成・パブリックコメント
    • 地方公共団体・関連団体との協議
    • 職員研修・周知活動

まとめ

今回の改正は、永住者の安定した地位を否定するものではなく、「悪質な事例に限定して取消・変更を可能にする」ことを目的としています。

項目内容
対象公租公課の故意不払、入管法上の義務違反、特定刑罰法令違反
判断基準「故意」「やむを得ない事情の有無」「社会的悪質性」を重視
手続国・自治体の通報 (任意)→ 入管庁の調査・意見聴取 → 取消または職権変更
原則運用永住者の定着性・人道的配慮を尊重し、取消は最終手段として限定的に運用
公表予定入管庁がガイドラインを策定・公表し、透明性・公平性を確保

おわりに

永住資格の取消制度は、外国人の在留管理をより公正にする一方で、永住者の生活の安定や社会的定着にも大きく関わる制度です。
入管庁は今後、ガイドラインによる判断基準の明確化と慎重な運用を進める方針を示しています。
関係者は、今後の公表内容に注視しつつ、実務上の対応準備を進めることが求められます。

永住許可制度の適正化について

日本における永住許可は、多くの外国人が目指す在留資格の一つです。しかし、この制度において、一部の悪質な永住者が問題視されるケースが発生しています。R6年に決定された改正入管法では、永住許可制度の適正化を図り、適切に在留する大多数の永住者に対する不当な偏見を防ぐための措置が導入されます。

本記事では、その背景と具体的な内容について解説します。


1. 永住許可制度の趣旨

「永住者」の在留資格は、活動や在留期間に制限がないことが最大の特徴です。永住許可を受けるためには、以下のような一定の要件を満たす必要があります。

  • 素行が善良であること
  • 独立して生計を営むことができること
  • 日本国の利益に合致していること(10年以上の在留、公的義務の履行など)

しかし、永住許可を受けた後は在留審査(在留期間の更新など)が行われないため、許可時に満たしていた要件がその後満たされなくなるケースが見られます。これにより、悪質な永住者が引き続き日本に在留し続ける問題が生じています。

2. 適正化に向けた新たな措置

今回の改正では、在留状況が良好と評価できない(入管法上の義務違反、故意に公租公課の支払をしない、特定の刑罰法令に違反した)一部の永住者に対し、永住許可を取り消すか、他の在留資格へ変更するための措置が導入されます。これにより、適切に在留している大多数の永住者への不当な偏見が生じるのを防ぐことが狙いです。

具体的には、以下のような対応措置が設けられています。

3. 具体的な対応措置

  1. 永住者の在留資格のまま引き続き在留
    • 慎重な調査の結果、問題がないと判断された場合、従来通り永住者として在留を続けることが可能です。
  2. 他の在留資格(定住者など)への変更
    • 調査の結果、取消事由に該当する場合と判断された場合であっても、対象者が引き続き日本に在留することが適当でないと認める場合を除き、法務大臣の職権により、永住資格から定住者など他の在留資格への変更が許可されるとされています。
  3. 永住許可の取消し
    • 上記の要件を満たさない場合で、引き続き日本に在留することが適当でないと判断された場合、永住許可が取り消されます。ただし、取消し後も再度永住許可を受けることが可能な場合もあります。
      ※引き続き日本に在留することが適当でない場合とは、例えば、今後も公租公課の支払をする意思がないことが明らかな場合や犯罪傾向が進んでいる場合等が該当します。

4. 永住許可制度の適正化が目指すもの

今回の制度適正化は、法を遵守し、社会に貢献する大多数の永住者を保護するためのものであり、一部の悪質な永住者による不正行為がもたらす不当な偏見を防ぐことが目的です。


結論

永住許可制度の適正化により、日本社会における公平性と安全性がさらに強化されることが期待されます。永住者として日本での生活を送る皆様は、法を遵守し、社会に貢献する姿勢を維持し続けることが重要です。制度変更に伴う詳細な手続きについては、出入国在留管理庁や市町村窓口で最新の情報を確認し、適切に対応するよう心掛けましょう。

永住許可申請時の身元保証に関する書類

Q:会社の代表者です。当社の外国人社員から、「永住許可申請を行うので、身元保証人になって欲しい」とお願いされました。
外国人社員からは、身元保証人の資料として、住民票や所得を証明する書面等を提出しなければならないと聞きましたが、本当にこれらの書類を提出しなければならないのでしょうか?

A:令和4年6月1日から、住民票等の提出は不要となりました。今後は、運転免許証等の身分証明書のコピーを提出すればOKです。

日本版高度外国人材グリーンカード(永住許可の改正案)

現行法では、永住の在留資格を取得するには、高度人材の方の場合「5年」の在留期間が必要ですが(通常は「10年」の継続在留が必要なところ、高度人材の方には優遇があります)、今後、高度な人材を日本に呼び込むために、「日本版高度外国人材グリーンカード」として、条件付で、最短「1年」で永住許可申請が可能となる改正案が出されており、年度内に実現をめざすとのことです。改正案では、高度人材の指標となる「ポイント制」のポイントが合計70点以上の方々は「3年」そして、合計80点以上の方々は「1年」の継続在留があれば、在留期間に関し、永住許可の要件を満たすとされています。
(※「1年」「3年」のそれぞれの継続在留の起算点のときに、ポイントが「80点」「70点」以上であったことも要件の一つとされています。)
また、通常の永住の要件としての、素行が善良であること、将来において安定した生活ができること、日本国の利益となること等も総合的に判断されます。

高度人材(高度専門職)への在留資格変更が可能かどうか、ポイント計算表を用いて確認されたい方は、お問い合わせください。

※2017/2/16まで「永住許可に関するガイドライン」及び「「我が国への貢献」に関するガイドライン」の一部改正に関する意見募集をしています。

在留資格・ビザ・海外法務労務の行政書士等の専門家集団シンシアインターナショナル