永住許可のガイドラインが改定されました―人事担当者が知っておきたい変更点と適用時期

2026年10月1日、出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン」が改定されました。

外国人社員の永住申請を支援している企業にとって、特に注意したいのが適用時期です。
改定後のガイドラインは、原則として2027年4月1日以降の申請に適用されますが、収入などに関する一部の項目は、既に申請中の案件にも適用されます。「来年からの変更だから、今は関係ない」とは限りません。

適用されるガイドラインは、申請日によって次のように分かれます。

申請日適用される内容
2026年3月31日まで2026年2月24日改訂版
2026年4月1日~2027年3月31日原則として2月24日改訂版。ただし、「収入」「公共の負担とならないこと」は10月1日改定版
2027年4月1日以降10月1日改定版

2026年4月1日以降に申請し、10月1日時点で審査中の案件も、収入等に関する新たな取扱いの対象です。企業としても、永住申請について相談を受けた際には、まず申請日と審査状況を確認することが大切です。

今回の改定では、収入について、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に、継続して達しているかを考慮することが示されました。

ここで注意したいのは、家族の収入をすべて合算できるわけではないという点です。
「家族滞在」の配偶者が資格外活動許可を受けて得ている収入などは、合算対象となりません。
また、海外に住んでいる親族を扶養している場合も、その親族を世帯人数に加算します。
社員本人の給与額だけで判断せず、家族の在留資格や扶養状況も踏まえて確認する必要があります。

2027年4月以降の申請に向けては、将来の生活基盤についても準備が必要です。
改定後のガイドラインでは、将来の年金受給見込額や、不足分を補う金融資産も考慮要素とされています。
現在の収入に加え、将来にわたって生活を維持できるかという観点が示されています。

また、日本語能力については、原則として「日本語教育の参照枠」のB1相当以上の能力を有するかが考慮されます。
ただし、高度人材とその家族などには例外があります。
日本の制度・ルールに対する理解や、学齢期の子の就学についても、考慮要素として明示されました。

人事担当者が社員を支援する際には、次の対応が考えられます。

  • 永住申請を予定している社員や、申請中の社員に改定情報を周知する。
  • 本人から相談を受けた際に、申請時期と適用されるガイドラインを確認する。
  • 在職証明書や給与関係資料など、会社が発行する書類を円滑に準備できるようにする。
  • 日本語学習や、日本の生活上の制度・ルールを学ぶ機会を案内する。

家族の収入や資産などは私生活に関わる情報です。
会社が一律に収集するのではなく、本人の希望に応じて、申請を担当する専門家と連携しながら支援するとよいでしょう。

永住申請を検討する社員に対しては、「申請時期によって適用内容が異なること」「申請済みでも新たな取扱いが及ぶ場合があること」を早めに伝え、個別の状況に応じた準備につなげることが大切です。

参考:
出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年10月1日改定)」

「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬」って?

外国人材を在留資格「技術・人文知識・国際業務」で採用する際には、学歴や業務内容だけでなく、報酬の設定にも注意が必要です。
具体的には、この在留資格には、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」という要件があります。


では、「日本人と同等額以上」とは、誰と、どのように比較するのでしょうか。
また、基本給のほかに支給する手当や賞与は、報酬に含めてよいのでしょうか。

結論から言うと、「月額○万円以上」という一律の基準があるわけではありません。

この要件は、単に「全国共通の一定額を上回れば満たされる」というものではありません。
個々の企業の賃金体系を基礎に、日本人と同等額以上であるかを判断します。また、他の企業の同種の職種の賃金も参考にされます。

そのため、「月給が20万円以上だから大丈夫」「最低賃金を上回っているから問題ない」とは限りません。
最低賃金を守ることは当然として、日本人と同等額以上の報酬を設定することも別途確認が必要です。


ただし、「日本人と同等額以上」といっても、社内の日本人社員全員と同じ給与にするという意味ではありません。

実務上は、外国人が大学卒業者であれば、その企業の日本人大学卒業者の賃金を参考にするとされています。
学歴に加え、担当業務、経験、職位などの条件をそろえ、どの賃金区分を適用するかを確認すると整理しやすくなります。

例えば、同じ業務を担当する日本人の新卒大学卒業者に月額25万円を支給する会社が、同じ条件の外国人の新卒大学卒業者に対して、「外国人だから」という理由で月額22万円を設定すれば、同等額以上といえるのかが問題になります。

一方、新卒社員と経験豊富な管理職との間に給与差があることまで、直ちに問題になるわけではありません。
繰り返しになりますが、大切なのは、日本人を採用する場合にも適用する賃金基準に沿って、給与額の根拠を説明できることです。

社内に比較できる日本人社員がいない場合も、自社の賃金規程や給与テーブル、他社の同種の職種の賃金などを参考に、設定額の妥当性を確認しましょう。


では、「報酬」とはどこまでを含むのでしょうか。

実務上、報酬には、基本給以外のものも含まれるとされ、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」と定義されています。
簡単にいうと、仕事をしたことに対する対価です。

したがって、報酬額は、基本給額だけで判断されるものではありません。
ただし、給与明細に記載される支給項目が、すべて在留資格の審査上の報酬に含まれるわけでもありません。

手当については、次のように判断されています。

通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く。)は含まない。

ここで注意したいのは、手当の名称だけで、一律に含める・含めないと判断しないことです。

確認する内容報酬の考え方
仕事の対価として支給するものか報酬に含める対象となります。
実費弁償の性格を有するものか原則として報酬に含まれません。
実費弁償の性格を有するものでも、課税対象となるか上記の「含まない」とする対象から除かれています。

例えば、「住宅手当」という名称だから必ず除外される、という読み方ではありません。
支給の実態や課税上の取扱いも確認する必要があります。

採用条件を検討する際は、基本給と各手当を分けたうえで、それぞれの支給目的、支給条件、課税・非課税の区分を整理しておくとよいでしょう。


また、年間の報酬額には賞与も含めてられます。

実務上、報酬の月額については、次のように判断されています。

報酬の月額は、賞与等を含めた1年間従事した場合に受ける報酬の総額の12分の1で計算する。

例えば、報酬に該当する毎月の支給額が25万円、年間の賞与が50万円の場合、年間報酬は350万円となり、12分の1は約29万1,667円です。

ただし、この計算例は、年間賞与50万円を受けることを前提にしています。
賞与が業績などによって変動する場合には、未確定の金額を当然に支給されるものとして扱わず、算定の根拠を確認しておきましょう。

また、日本人社員との比較でも、外国人社員側だけ賞与を加え、日本人社員側は基本給だけで比較するなど、比較の条件が異ならないようにすることが大切です。


人事担当者の方は、次の点を確認しておくと、報酬要件を説明しやすくなります。

  • 同じ条件で日本人を採用する場合、どの給与区分を適用するか
  • 外国人社員の給与額を、その区分に沿って設定しているか
  • 日本人社員との間に差がある場合、その理由を説明できるか
  • 各手当について、支給内容と報酬への算入の可否を確認したか
  • 賞与を含めた年間報酬の計算に根拠があるか

給与額だけでなく、「なぜ、その金額になるのか」を賃金規程や雇用条件に基づいて説明できる状態にしておくことが、採用手続を進めるうえで役立ちます。

「経営・管理」の外国人の出国増加について、日本経済新聞が報道

2026年9月2日付の日本経済新聞で、在留資格「経営・管理」を持つ外国人の出国が増えていると報じられました。

同紙が出入国在留管理庁の統計を分析したところ、2026年1月から6月までに、再入国の手続きをせずに日本を出国した「経営・管理」の外国人は953人で、前年同期の約3.9倍となったとのことです。

この数字は、一時帰国などによる出国をすべて含めたものではなく、再入国の手続きを伴わない出国を対象としています。また、外国人経営者全体ではなく、「経営・管理」の在留資格を持つ方についての集計です。

報道の背景には、2025年10月16日に施行された「経営・管理」の許可基準の改正があります。この改正では、資本金等の要件が3,000万円以上となるなど、許可基準が見直されました。改正の内容は、出入国在留管理庁の公表資料で確認できます。

日経は、出国の増加について、在留審査の厳格化が影響した可能性を指摘しています。
ただし、紹介されている出国者数だけで、個々の出国理由まで判断することはできません。
953人全員が在留期間の更新を認められなかった、あるいは制度改正を理由に出国したことを示す数字ではない点には留意が必要です。

出典:日本経済新聞、2026年9月2日付
「『経営』資格の外国人、上半期の出国3.9倍 資本金など在留要件厳しく」

警備業も「特定技能」の対象に? 警察庁が外国人材の受入れに向けた検討会を開催へ

警備業における外国人材の受入れについて、制度の見直しにつながる動きがありました。

2026年9月10日の記者会見で、警察庁長官は、同月から「警備業への外国人材の受入れに関する検討会」を開催すると説明しました。警備業を「特定技能」と「育成就労」の対象とすることの是非や、受け入れる場合の条件などを検討する方針です。

以下、今回の発表のポイントを整理します。


背景にあるのは、警備業の深刻な人手不足

警備業は、人の生命や身体、財産を守り、私たちの暮らしを支える仕事です。社会的な需要が増大する一方で、人材確保が課題となっています。
会見では、警備員を含む「保安職業従事者」の有効求人倍率が、全職業平均の5倍以上で推移していることが説明されました。これは警備員だけの数値ではありませんが、人手不足の厳しさを示すものです。

こうした状況を踏まえ、対応策の一つとして、外国人材の活用について専門家による検討を行うことになりました。


何が検討されるのでしょうか

警察庁長官が示した主な検討事項は、次の二つです。

  • 警備業を「特定技能」「育成就労」の対象とし、外国人材を受け入れることをどう考えるか
  • 対象とする場合、必要な日本語能力をはじめ、受入れの在り方をどうするか

警備の現場では、周囲との意思疎通や、状況に応じた適切な対応が求められます。そのため、単に人員を確保するだけでなく、業務を適正に行うための条件を検討することが重要になります。

会見では、検討結果について、2027年の年初に取りまとめることを目指すと説明されています。


「検討会の開催」と「受入れの決定」の区別は必要

今回の発表を受けて、「警備業でも特定技能の外国人を採用できるようになる」と期待される事業者の方もいらっしゃると思います。
ただし、今回の会見で示されたのは、対象分野への追加の是非を含めて検討するという方針です。警備業の追加や受入れ開始時期が決まったという発表ではありません。
また、2027年の年初という時期も、検討結果の取りまとめの目標であり、受入れ開始の予定日ではない点に注意が必要です。

外国人の採用に当たっては、その方の在留資格や就労可能な範囲と、実際に担当してもらう業務との確認が欠かせません。
今回の発表だけを前提に、特定技能による警備業務への配置が可能と判断することはできません。

今後は、対象分野への追加の可否に加え、対象となる業務、日本語能力や技能に関する要件、受入れ企業側の条件などが、どのように具体化されるかが注目されます。採用計画を立てる際には、検討会の取りまとめや、その後の正式な制度改正を確認していく必要があります。

出典:国家公安委員会「令和8年9月10日 国家公安委員会委員長記者会見要旨」
※本記事は、同日の会見で公表された内容に基づいています。警備業への外国人材の受入れに関する発言者は、警察庁長官です。

「外国人の受入れに人数上限」政府が検討へ―特定技能だけの話ではない?

2026年7月24日、共同通信が、政府が在留外国人の受入れの在り方について有識者会議を設置し、「特定の在留資格に人数上限を設けるなどの規制についても議論するとみられる」と報じました。

「人数上限」と聞くと、まず思い浮かぶのが「特定技能」です。

しかし、今回政府が始めた議論は、特定技能だけを対象としたものではないように見受けられます。


特定技能1号には、もともと「受入れ上限」がある

特定技能1号については、以前から受入れ分野ごとに一定期間の「受入れ見込数」が設定されています。

出入国在留管理庁も、この受入れ見込数について、「大きな経済情勢の変化が生じない限り、1号特定技能外国人の受入れの上限として運用」すると明記しています。

実際、2026年には外食業分野で受入れ見込数5万人への到達が見込まれたことから、在留資格認定証明書の交付を一時停止する措置がとられています。

したがって、特定技能について「人数を管理する」という考え方自体は、新しいものではありません。


今回は「外国人の受入れ全体」の基本方針を作る議論

今回注目すべきなのは、政府がもっと広い視点から外国人の受入れそのものを検討し始めたことです。

2026年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」では、外国人の受入れの基本的な在り方について有識者会議で議論し、2026年度中に「基本方針」を取りまとめることが明記されました。

さらに、小野田紀美・外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣も7月24日の記者会見で、外国人の受入れについて将来推計等を行った上で基本方針を取りまとめると説明しています。

ここでは、自民党と日本維新の会の連立合意書において、「在留外国人に関する量的マネジメント等」を含む基本方針を策定するとされていることにも言及されています。

つまり、今回の議論は、単に「特定技能の受入れ枠を何人にするか」という話ではなく、日本として外国人をどのような規模・構成で受け入れていくのかという、より大きな政策論です。


「在留資格別」に将来の外国人数を推計する

さらに注目されるのが、8月7日に開催された第1回「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のためのワーキンググループ」です。

政府は、今後おおむね2040年までについて、在留外国人の性別・年齢・在留資格・国籍等別の人口や就業者数を推計することを検討しています。

そして、その推計や外国人が社会・経済に与える影響を分析した上で、外国人の受入れの基本的な在り方を議論することとされています。

ここで重要なのは、「在留資格別」に推計しようとしていることです。

したがって、政府が今後検討する「量的マネジメント」が、特定技能だけに限定されたものになるとは限りません。


「技人国」や「留学」にも上限が設けられる?

では、「技術・人文知識・国際業務」や「留学」といった在留資格にも人数上限が設定されるのでしょうか。

現時点では、そこまでは決まっていません。

現時点で公表されている政府資料では、「技術・人文知識・国際業務は○万人まで」「留学は○万人まで」といった具体的な上限は示されていません。

もっとも、まったく検討対象外とも言い切れません。

日本維新の会の「維新八策2026」では、「留学・技術・人文知識・国際業務等の在留資格への量的管理拡大」が明記されています。

これは政府決定ではありません。

しかし、政府自身が「量的マネジメント」を含む外国人受入れの基本方針を策定しようとしていること、さらに在留資格別の将来人口を推計しようとしていることを踏まえると、今後の議論では、特定技能以外の在留資格についても人数・比率等をどのように管理するかが論点となる可能性があります。


「上限導入が決まった」わけではない

ニュースを見る際には、この点には注意が必要です。

現在の状況を整理すると、「特定技能以外の在留資格についても量的管理を検討する可能性がある」という段階であって、「技術・人文知識・国際業務や留学に人数上限を設定することが決まった」わけではありません。

政府は今後、2040年頃までの外国人数を在留資格別に推計し、社会・経済への影響などを分析した上で、2026年度中に外国人受入れに関する「基本方針」を取りまとめる予定です。

これまでの外国人政策は、「人手不足の分野でどのように外国人材を受け入れるか」という議論が中心でした。

今回の動きは、それより一段上の、「日本社会として、外国人をどの程度、どのような在留資格で受け入れていくのか」という議論に移りつつあるものといえます。

外国人を雇用している企業にとっても、今後策定される「基本方針」は、かなり重要なものになりそうです。

強制退去手続中の外国人情報を自治体へ―入管庁が「プッシュ型」の情報提供を開始

2026年8月8日付の読売新聞の記事によると、出入国在留管理庁は、退去強制手続中で居住している外国人の情報を、居住先の市町村に定期的に提供する新たな運用を2026年7月から開始しました。

これまでも、市町村から照会があった場合などには情報提供が行われていましたが、今回の変更では、市町村からの照会を待つのではなく、入管庁側から対象となる市町村に情報を提供する「プッシュ型」の仕組みが採用されています。


なぜ、このような仕組みが導入されたのか

背景にあるのは、退去強制手続中であっても、すべての外国人が入管施設に収容されているわけではないという事情です。

現在の入管制度では、一定の場合には「監理措置」により監理人の監督の下で施設外で生活することができます。
また、「仮放免」により収容が一時的に解除され、地域で生活している外国人もいます。

ところが、こうした人について、地方自治体側では誰が地域内に居住しているのかを十分に把握できていないことが課題となっていました。

政府が2026年1月23日に決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」でも、被仮放免者等について、出入国在留管理庁と市区町村との間で、より適切な情報共有を図ることが方針として示されていました。

さらに、出入国在留管理基本計画では、この情報提供は、「被収容者の適切な処遇の確立と監理措置制度の適正な運用」に関する施策の一つとして位置付けられています。

同計画では、被仮放免者や被監理者の条件違反等に適切に対応すること、そのために警察と入管との情報連携を行うことに続けて、市区町村へのプッシュ型情報提供が掲げられています。

したがって、今回の仕組みは、単に自治体の行政サービスにつなげるための制度というより、退去強制手続中で地域に居住する外国人について、国と地方自治体との間で情報共有を強化し、その所在や状況を適切に把握できるようにすることが中心的な目的と考えられます。


2026年7月から実際に始まったこと

読売新聞によれば、2026年7月から、退去強制手続中の外国人が新たに居住することとなった市町村に対し、入管庁から、氏名、住所、国籍、生年月日などの情報が毎月提供されるようになりました。

また、情報の更新漏れを防ぐため、毎年6月時点で各自治体に居住している対象者全員の情報を一覧で提供する運用も行われるとされています。

冒頭で説明したように、従来は本人の同意を得た上で情報提供することが基本であり、市町村側から照会すれば本人の同意がない場合でも情報を得られる制度もありましたが、利用は限定的でした。
今回の変更により、自治体が自ら照会しなくても、入管庁から情報が届く仕組みに変わったことになります。


今後はどうなるのか

ここからは、現在公表されている政府資料から読み取れる今後の方向性です。

今回の情報提供の方法が、現在の形で固定されたわけではありません。
出入国在留管理基本計画では、プッシュ型の情報提供を開始した後、その利用実態を踏まえて「共有方法や頻度など、更なる対応を検討する」とされています。
さらに、市区町村が抱えている被仮放免者等に関する問題を把握し、その実態を踏まえて、国としてさらに対応を検討するとしています。

つまり、今回の2026年7月の運用開始は、情報連携の完成形というより、今後の制度運用を検討するための第一段階と見ることができます。

今後は、実際に自治体が提供された情報をどのように利用しているのか、自治体側でどのような問題が発生しているのかを確認した上で、情報提供の頻度や方法、入管庁と自治体との連携方法が見直される可能性があります。

また、政府は「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」を進めており、被仮放免者については動静監視や不法就労への対応も強化しています。2026年5月には、このプランをさらに強力に推進するための施策も公表されています。

政府資料では、市区町村からの相談などにより被仮放免者等の条件違反が疑われる場合には、必要な調査を行うことも示されています。

そのため、自治体への情報提供と、自治体から入管庁への情報提供・相談という双方向の情報連携が、今後さらに強化されていく可能性があります。

もっとも、現時点で、自治体に提供する個人情報の項目をさらに増やすことや、自治体に新たな報告義務を課すことまで決定されているわけではありません。

今後のポイントは、今回始まった情報提供が実際にどのように利用され、その結果を受けて政府がどこまで情報共有の仕組みを拡充していくのか、という点になるでしょう。

※読売新聞の記事については、記事の内容を要約して紹介しており、記事本文の転載はしていません。また、「今後」の部分については、公表されている政府資料に示された検討方針を基に、今後想定される方向性を整理しています。

特定技能2号の在留期間に「5年」が追加へ――在留期間更新の負担軽減に

法務省は2026年8月4日、在留資格「特定技能2号」について、在留期間に新たに「5年」を追加する省令改正案を公表しました。

現在、特定技能2号で付与される在留期間は、

「3年、2年、1年又は6月」

とされています。今回の改正では、ここに「5年」が追加される予定です。出入国在留管理庁も、現在の特定技能2号の在留期間を「3年、2年、1年又は6月」と案内しています。


なぜ「5年」が追加されるのか

法務大臣は今回の改正について、「他の就労を目的とする在留資格との均衡や外国人の利便性を図るため」と説明しています。

例えば、「技術・人文知識・国際業務」「技能」などの一般的な就労資格では、「5年」の在留期間が設けられています。
これに対し、長期間にわたって日本で就労することが予定されている特定技能2号には、これまで5年の在留期間がありませんでした。

特定技能2号は、特定技能1号とは異なり、在留期間を更新することで在留できる期間そのものに上限がありません。

それにもかかわらず、最長でも3年ごとに在留期間更新許可申請を行う必要があったため、今回の改正は、こうした手続上の負担を軽減するものと考えられます。


企業側にとってもメリットがあります

「5年」の在留期間が付与されれば、外国人本人だけでなく、受入れ企業にとってもメリットがあります。

特定技能2号については、在留期間の更新の際にも、外国人本人だけではなく、所属機関に関する事項や分野ごとの要件を確認しながら申請を行う必要があります。

例えば、これまで3年間の在留期間を付与されていた外国人について、次回から5年間の在留期間が付与されれば、単純に考えても更新手続の頻度を減らすことができます。

特定技能2号は、熟練した技能を有する外国人を長期的に雇用することを予定した制度です。

その意味でも、「長期間働くことができる在留資格なのに、在留期間の更新は比較的短い周期で必要」という状態が見直されることになります。


「特定技能2号なら5年になる」わけではありません

もっとも、今回の改正によって、すべての特定技能2号外国人に一律5年の在留期間が付与されるわけではありません。
あくまで、入管が付与することのできる在留期間の選択肢に「5年」が追加されるという改正です。

したがって、改正後も、個別の審査の結果によっては3年、2年、1年、6月などの在留期間が付与される可能性があります。

ここは、「特定技能2号の在留期間が5年に延長される」と理解するよりも、「特定技能2号について、最長5年の在留期間を一度に付与できるようになる」と理解した方が正確です。

なお、これは特定技能1号の「通算在留期間が原則5年以内」というルールとは全く別の話です。特定技能2号については、現在も通算在留期間の上限はありません。


現在パブリックコメント中です

今回の改正はまだ確定したものではなく、現在、省令改正案についてパブリックコメントが実施されています。

e-Govによれば、「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案」は2026年8月4日に公示され、意見募集は9月3日0時までとなっています。

特定技能2号は、単に「1号の次の在留資格」というだけではなく、熟練した外国人材を日本企業が長期にわたって雇用するための在留資格として、その重要性が高まっています。

今回の「5年」の追加は小さな改正に見えますが、特定技能2号を短期的な外国人雇用ではなく、より長期的な雇用を前提とした在留資格として運用していく方向性を示す改正の一つといえそうです。

永住許可の審査が大きく変わります―新しい「永住許可に関するガイドライン案」を読む

出入国在留管理庁から、「永住許可に関するガイドライン」の大幅な改定案が公表されました。

今回の改定案では、収入、将来受け取る年金、日本語能力、日本の制度・ルールへの理解、子どもの就学状況など、これまでのガイドラインにはなかった具体的な考慮要素が多数追加されています。

単に永住許可の基準が少し厳しくなる、という程度の改定ではありません。

今回の案からは、「日本で長く暮らしているから永住を認める」という発想から、「将来にわたり日本社会の一員として安定して生活していけるかを総合的に審査する」という方向へ、永住審査の考え方自体を変えようとしていることが読み取れます。

なお、現時点ではパブリック・コメントに付されている「案」の段階です。


「永住者」は最も安定した在留資格だからこそ、慎重に審査する

今回のガイドライン案は、まず「永住者」という在留資格の位置付けから説明しています。

「永住者」は、在留活動にも在留期間にも制限がなく、その後の生涯を日本に生活の本拠を置いて過ごすことが想定される、最も安定した法的地位です。だからこそ、永住許可については「特に慎重な審査を行う必要がある」とされています。

さらに注目すべきは、「その者の永住が日本国の利益に合する」という国益要件について、単に日本の国益に反しないだけでは足りず、「積極的かつ具体的に」その外国人の永住が日本国に利益をもたらす必要があると明記されたことです。

永住許可を、単なる長期在留の延長ではなく、「活動・期間の制限のない地位を将来にわたって与えることが適切か」という観点から判断する姿勢が、かなり鮮明になっています。


収入は「日本人世帯の平均収入」が一つの基準に

実務上、特に大きな影響が予想されるのが収入要件です。

改定案では、独立生計要件について、「現在及び将来において自活可能」であり、「日本人と同等水準以上の経済条件」が求められると明記されました。

そして具体的には、申請者の属する世帯の年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に、継続して達しているかが考慮されます。

注意したいのは、「年収○万円以上」という一律の基準ではないことです。
単身者と、配偶者や子どもを扶養している人とでは基準が変わります。

また、海外に居住している親族であっても申請者が扶養していれば世帯人数に加算されます。世帯人数が5人以上になる場合には、さらに生活費等の増加額も考慮されます。

一方、「家族滞在」など就労を目的としない在留資格の方が資格外活動によって得ている収入については、原則として世帯年収に合算しないとされています。

家族全体の収入を単純に合計すればよい、という話でもありません。


「今の年収」だけでなく「老後の年金」まで審査対象に

さらに大きな変更が、将来受け取る年金です。

申請者の年齢、これまでの年金加入期間、働き方、平均年収、現在の年収などから、将来受け取ることのできる年金額を推計します。
そして、その金額を、日本人世帯の平均収入を上回る水準の年収で30年間働き、厚生年金に加入していた場合に受け取ることのできる年金額と比較する仕組みが示されています。

不足する場合でも、一定の金融資産を保有していれば補うことができます。

つまり、これまで以上に、「現在生活できているか」だけではなく、「永住を認めた後、老後まで含めて安定した生活を維持できるか」を見る審査になります。


日本語能力は「B1相当」が一つの目安に

日本語能力についても、明確な基準が示されました。

原則として、「日本語教育の参照枠」におけるB1相当以上の日本語能力を有しているかが考慮されます。

ただし、すべての申請者について一律にB1が必須になるわけではありません。
高度人材外国人やその家族、日本で初等・中等教育を一定期間受けた人など、本人にB1相当以上の日本語能力を求める必要性・相当性が低い場合には、考慮要素としないことも明記されています。

したがって、「永住申請には日本語B1が絶対条件になる」と理解するのは正確ではありません。
とはいえ、日本語能力が永住審査の正式な考慮要素として明文化されること自体は、大きな変更です。


日本の制度・ルールを理解しているかも確認

さらに、申請者が日本の制度やルールを理解しているかも審査対象となります。

具体的には、出入国在留管理庁長官が指定する方法により、「生活・就労ガイドブック」に記載された事項を中心に、日本の制度・ルール等について一定水準以上の理解があるかを確認するとされています。

今後、どのような方法で確認するのかが重要になります。

単なる書類審査から、日本語能力や日本社会に関する知識も含めて「日本社会への適応」を確認する審査へと移っていくことが予想されます。


子どもを学校に通わせているかも審査対象に

学齢期の子どもがいる場合には、その子どもが小学校または中学校に通学していることも考慮要素となります。申請者自身が学齢期の場合も同様です。

つまり、永住審査は本人の勤務状況や納税状況だけを見るものではなく、家族単位で日本社会にどのように定着しているかを見る方向に進んでいます。


日本人・永住者の配偶者の特例も「3年+1年」から「5年+3年」へ

日本人、永住者、特別永住者の配偶者については、現在、原則10年間の在留を必要とする要件について特例があります。

現在のガイドラインでは、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、日本に引き続き1年以上在留していることが特例の基準となっています。

今回の改定案では、これが、実体を伴った婚姻生活が5年以上継続し、かつ、引き続き3年以上日本に在留していることに変更されます。

日本人と結婚している外国人等の永住申請については、実務上かなり大きな変更になります。


特に注意―2026年4月以降に既に申請した人にも新しい基準が適用される可能性

そして、今回の改定案で特に注意していただきたいのが、適用時期です。

新しいガイドラインは、原則として2027年4月1日以降に行われる永住許可申請から適用されます。

しかし、すべての項目が2027年4月から始まるわけではありません。

ガイドライン案は、

①収入に関する基準
②「公共の負担とならないこと」に関する基準

について、

「ガイドライン改定日から6か月前の日以降にされた申請で、かつ、改定日において申請中である案件」にも適用するとしています。

ここは非常に重要です。

つまり、2026年10月にこの部分が改定される場合、2026年4月以降に永住申請をした案件で、10月の改定時点でもまだ審査中のものについては、新しい収入基準等で審査される可能性があります。

「私は4月や5月に申請したから、今回の改定は関係ない」とは限りません。

むしろ、現在の永住許可申請は審査に相当の期間を要することもあります。

そのため、今年春以降に既に永住申請をしている方こそ、この経過措置を確認する必要があります。

例えば、

2026年5月に申請
↓
2026年10月の改定時点でも審査中
↓
収入・公共負担について新しい考え方が適用

ということがあり得ます。

通常、制度改正というと「施行後に申請した人から新しい基準」と考えがちですが、今回の収入基準等についてはそうではありません。

既に申請を済ませている案件にも影響する可能性がある。

今回のガイドライン案の中でも、実務上最も早く注意しなければならないポイントの一つです。


永住審査は「これまで」だけでなく「これから」を見る方向へ

今回のガイドライン案を通して見えてくるのは、永住審査の時間軸が変わることです。

これまでも、在留期間、収入、納税、年金加入、法令遵守などは重要な審査要素でした。
しかし今回の案では、

・現在の世帯収入
・将来の収入
・将来受け取る年金
・保有する金融資産
・日本語能力
・日本の制度・ルールへの理解
・子どもの就学状況

などを通じて、「これまで日本で問題なく生活してきたか」だけではなく、「永住を認めた後も、日本社会の構成員として安定して生活していけるか」を見ることが、より明確になっています。

永住許可は、一度認められれば活動内容や在留期間の制限がない、非常に安定した在留資格です。出入国在留管理庁も、他の在留資格と比較して在留管理が大幅に緩和されるため、通常の在留資格変更より慎重な審査が必要だと説明しています。

今回の改定案は、その「永住」という地位をどのような人に認めるのかを、従来より具体的かつ広い観点から判断しようとするものといえるでしょう。

そして、これから永住申請をする方だけでなく、2026年4月以降に既に申請を行い、現在審査を待っている方についても、今回の改定は決して「将来の話」ではありません。

今後、パブリック・コメントを経て最終的にどのような内容で確定するのか、特に収入基準の具体的な水準や、日本語能力・制度理解をどのような方法で確認するのかを注視する必要があります。

外国人雇用は「申請書類を見る審査」から「実態を見る在留管理」へ

出入国在留管理庁から、「第二次出入国在留管理基本計画」が公表されました。

この「基本計画」は、個々の在留資格の要件を直接定める省令や告示ではありません。
入管法に基づき、今後の外国人の入国・在留に関する施策の基本となる方針を法務大臣が定めるものです。つまり、これから入管行政がどちらの方向へ進んでいくのかを読むための重要な資料です。

今回の基本計画を外国人雇用の実務という観点から読んでいて、特に重要だと感じるのが、外国人の在留資格を「申請したときの書類」だけで判断するのではなく、日本で実際にどのような活動をしているのかを継続的に把握していくという方向性です。

もちろん、これまでも在留資格の許可後に何をしてもよかったわけではありません。

ただ、今回の基本計画では、「本邦に在留する全ての外国人について適正な在留管理」を行うことが大きな政策の柱として掲げられています。
概要では、デジタル技術を活用した出入国審査、適正な在留管理、外国人との秩序ある共生、退去強制手続・不法滞在対策などが、今後の基本的な方向として整理されています。

これは、外国人を雇用する企業にとっても決して他人事ではありません。


「申請のときだけ整っていればよい」ではなくなる

例えば、「技術・人文知識・国際業務」の外国人を採用するとします。

従来から、

「大学で何を専攻したのか」
「会社でどのような仕事をさせるのか」
「その仕事は専門的な知識を必要とするものなのか」

といった点は審査されてきました。

そのため企業としては、雇用契約書、職務内容説明書、会社案内などを用意して、「この外国人にはこの仕事をしてもらいます」と説明してきたわけです。

しかし、今後より重要になるのは、「申請書にそう書いてあったか」ではなく、「本当にその仕事をしているのか」という点です。

実際、現在の在留管理制度でも、外国人本人や受入れ企業について所属機関に関する届出制度が設けられており、受入れの開始・終了などの情報が入管に入る仕組みがあります。
届出が適切に行われていない場合には、在留期間更新時に事実関係を確認するなど、審査を慎重に行うことがあることも明示されています。

つまり、在留資格はもともと「許可を取ったら終わり」の制度ではありません。

今回の基本計画は、その考え方をさらに進め、許可後を含めた在留期間全体について実態を把握する方向を明確にしていると読むことができます。


最近の「技人国」の変更も、この流れで見ると分かりやすい

ここで思い出していただきたいのが、2026年4月15日から始まった「技術・人文知識・国際業務」の申請書類の変更です。

カテゴリー3・4の企業については、「所属機関の代表者に関する申告書」が追加されました。

さらに、翻訳・通訳等を含め、主に言語能力を用いる対人業務に従事する場合には、業務上使用する言語について原則としてCEFR B2相当の言語能力を証明する資料も求められるようになっています。

これは単純に「提出書類が2枚増えた」という話として見るべきではないと思います。

申請人本人だけではなく、外国人を雇用する会社側にも、申請内容についてより明確に説明してもらう。
その方向への変化と考えた方が分かりやすいでしょう。

特に「技術・人文知識・国際業務」は、同じ「営業」「接客」「マーケティング」「ホテル業務」という名称でも、実際の仕事の内容によって在留資格該当性が変わります。

求人票には「海外営業」と書いてある。

雇用契約書にも「海外営業」と書いてある。

しかし実際には、ほとんどの時間を商品の陳列やレジ業務に費やしている。

このような場合、書類上の職種名だけではなく、実際にどのような業務に従事しているのかが問題になります。


入管だけが持っている情報で審査する時代でもなくなる

もう一つ重要なのが、行政機関間の情報連携です。

政府は以前から、正確な情報に基づく円滑な審査と適正な在留管理を目的として、関係行政機関間の情報連携を進める方針を示しています。マイナポータル等を利用した情報取得の拡大や、マイナンバーカードと在留カードの一体化なども進められてきました。

この方向が進めば、在留審査は徐々に、「外国人や会社から提出された資料だけを確認する審査」から、「行政側が保有している各種情報との整合性も確認する審査」へ変わっていきます。

これは非常に大きな変化です。

例えば、

申請書では正社員となっているが、実際の給与支払状況はどうなのか。

会社は社会保険の必要な手続を行っているのか。

届出上の所属先と実際の就労先は一致しているのか。

申請時に説明した業務と、その後の勤務実態は一致しているのか。

こうした情報が互いにリンクして確認されるようになれば、申請書だけをきれいに作ることの意味は次第に小さくなります。

なお、どの行政情報が、いつから、どの在留資格の審査で具体的に利用されるかまで今回の基本計画によって一律に決まったわけではありません。

ここは、「現在すでに全ての情報が入管に自動連携されている」と誤解しないよう注意が必要です。


厳格化だけが目的ではない

もっとも、今回の基本計画を「外国人に対する取締り強化計画」とだけ理解するのも正確ではありません。

政府は一方で、日本の経済社会を支える外国人材を受け入れ、外国人との「秩序ある共生社会」を実現することも重要な政策として位置付けています。

その一環として、外国人が日本語や日本の制度・生活上のルール等を学ぶ「日本語・生活学習プログラム(仮)」についても、具体的な検討が進められています。

2026年7月に公表された法務大臣政務官PTの報告書では、2026年1月に取りまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を受けて、このプログラムについて具体的な検討を進めてきたことが説明されています。

したがって、政策全体の方向性は、ルールを守って日本で生活・就労する外国人については、受入れや社会適応を円滑にする。

その一方で、在留資格の内容と実際の活動が異なる場合や、必要な義務を履行していない場合については、実態を把握し、適正に対処する。

というものだと考えた方がよいでしょう。

「円滑化」と「厳格化」を同時に進めるわけです。


外国人を雇用する企業が考えるべきこと

企業側に求められる対応も変わってきます。

これまでは外国人採用の際、「この人は技人国を取れるか」という入口の確認が中心だったかもしれません。

しかし今後は、「この人を、この在留資格のまま適正に雇用し続けることができるか」という視点がより重要になります。

外国人を採用した後、配置転換をする。

仕事内容を変更する。

別の事業所へ異動させる。

派遣先を変更する。

兼務させる。

こうした人事上はごく普通の変更が、外国人の場合には在留資格との関係で問題になることがあります。

したがって、外国人雇用の管理も、採用時の在留資格チェックだけではなく、採用 → 配属 → 業務変更 → 異動 → 更新 → 退職まで、一連の人事管理として考える必要があります。


「申請書を作る」から「適正な雇用状態を作る」へ

第二次出入国在留管理基本計画を読んで、外国人を雇用する企業にとって最も重要なのはここだと思います。

これからの在留管理では、申請書に何と書いたかだけではなく、その外国人が実際にどう働いているのかがますます重要になります。

申請時だけ在留資格に合う仕事を用意して、その後は別の仕事をさせる。

職務内容説明書だけ専門的な業務にして、実際には単純作業を中心にさせる。

そのような運用は、今後ますますリスクが高くなるでしょう。

外国人雇用について企業が考えるべきことは、「どうすれば在留資格の許可を取れるか」だけではありません。

許可された在留資格と実際の雇用・就労の状態を、どう一致させ続けるか。

第二次出入国在留管理基本計画は、日本の在留管理がその方向へ進んでいることを、かなり明確に示しているように思います。

外国人向け「日本語・生活学習プログラム(仮)」とは

令和8年7月、法務大臣政務官を座長とするプロジェクトチームは、「日本語・生活学習プログラム(仮)」の創設に向けた報告書を公表しました。

このプログラムは、日本に中長期間在留する外国人に対し、日本語だけでなく、日本の制度、生活上のルール、社会規範などを体系的に学ぶ機会を提供しようとするものです。

現時点では、具体的な制度内容や開始時期が確定したわけではありません。
しかし、将来的には、在留期間更新許可、永住許可、帰化などの審査にも関係する可能性が示されており、外国人を雇用する企業にとっても重要な動きといえます。


プログラム創設の背景

報告書では、現在、日本には410万人を超える外国人が在留しており、多くの外国人が地域社会の一員として生活・活躍している一方、一部の外国人によるルールを逸脱した行為や制度の不適正な利用が、国民の不安や不公平感につながっていると指摘されています。

これまでも、政府は生活オリエンテーション動画や「生活・就労ガイドブック」、日本語学習教材などを提供してきました。
しかし、これらの利用は基本的に任意であり、外国人が体系的に学習する仕組みや、学習を促す明確な動機付けが十分ではありませんでした。
また、外国人が多く居住する地方公共団体や受入れ企業に、学習支援の負担が偏っていることも課題とされています。

そこで、国の責任において、全国共通の体系的な学習プログラムを整備する方針が示されました。


プログラムの目的

プログラムの大きな目的は、次の二つです。

一つ目は、外国人が日本語や生活上の制度・ルールを理解し、「責任ある社会の一員」として行動できるよう支援することです。

二つ目は、外国人が日本社会に円滑に適応できるよう、国が体系的かつ効果的な学習教材を提供するとともに、在留審査を通じて学習の動機付けを行うことです。

単に外国人の生活を支援するだけではなく、国民の安全・安心を確保し、秩序ある共生社会を実現するための社会基盤として位置付けられている点が、この制度の特徴です。


日本語学習と生活学習を一体的に実施

プログラムは、大きく「日本語学習」と「生活学習」の二つで構成される予定です。

生活学習には、例えば、次のような内容が含まれることが想定されます。

・日本の法令や行政制度
・税金、社会保険、医療制度
・雇用や労働に関するルール
・交通ルール
・ごみ出しなどの生活上のルール
・防災や災害時の対応
・出産、育児、教育、介護に関する制度
・地域特有の文化や生活慣行

日本語学習についても、単なる文法や語彙の習得ではなく、教育、就労、日常生活の場面における実践的なコミュニケーション能力を身に付けることが重視されています。

中期以降の学習では、「自立した言語使用者」として日本社会で生活できる水準を目指すとされており、政府の方針上は、「日本語教育の参照枠」におけるB1レベル相当が一つの目安として示されています。


入国前からオンラインで受講

プログラムは、入国後に初めて受講するのではなく、入国前から学習を開始できる仕組みとすることが想定されています。

具体的には、ICTを活用したオンデマンド教材を整備し、海外からでもスマートフォンやパソコンで受講できる環境を構築する方向です。
また、単に動画を見るだけの一方向型の教材ではなく、AIなどを活用した双方向型の学習や、理解度を確認するテスト機能を導入することも検討されています。

プログラムの内容は、次のように段階的に分けられる可能性があります。

入国前・入国直後の学習

日本で生活するために最低限必要な日本語、生活ルール、マナー、制度などを学習します。
「入国前に受講を求める内容」と「入国後一定期間内に受講を求める内容」を分けることも検討されています。

中期以降の学習

長期滞在や永住を希望する外国人を対象に、より高度な日本語能力や、日本の制度に関する幅広い知識を学習します。
出産、育児、教育、介護など、本人のライフステージに応じて学習内容を選択できる仕組みも想定されています。


対象者は中長期在留者を幅広く想定

報告書では、基本的に、中長期の在留を目的とする外国人を幅広く対象とする方向が示されています。

特に、これまで生活オリエンテーションや日本語学習の機会が少なかったと考えられる次のような外国人については、内容を充実させる必要があるとされています。

・家族滞在
・日本人の配偶者等
・定住者
・受入れ機関のない個人事業主
・外国人就労者に帯同する配偶者や家族

技能実習、育成就労、特定技能については、既に受入れ機関による講習や生活支援の仕組みがあります。そのため、既存制度による講習と、新しい学習プログラムとの重複をどのように整理するかが今後の検討課題となります。


在留期間更新や永住許可への反映

この報告書で特に注目すべき点は、プログラムの受講状況を在留審査に反映させる方針が示されていることです。
入国前・入国直後の学習については、在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新許可申請など、学習の動機付けとなるタイミングで、受講状況を審査上の考慮事項とすることが検討されています。

さらに、中期以降のプログラムについては、次のような方向性が明記されています。

・永住許可申請において、プログラムの受講を許可要件とする
・永住許可を申請しないまま長期間滞在する外国人についても、一定の在留申請時に受講を許可要件とする
・永住許可や帰化の審査では、受講した事実だけでなく、内容を理解しているかも確認する

ただし、現時点では、「どの在留資格を対象とするのか」「何時間の受講を求めるのか」「どの程度の日本語能力が必要か」「いつから適用するのか」といった具体的な要件は確定していません。
あくまで、今後の制度設計に向けた検討の方向性が示された段階です。


受講状況を管理するシステムも構築

在留審査で受講状況を確認するためには、誰が、いつ、どの講座を受講し、どの程度理解したかを管理する必要があります。
そのため、報告書では、受講状況を一元的に管理するシステムの構築が必要とされています。

また、オンライン学習では、他人による代理受講やなりすましが発生する可能性があるため、本人確認や不正防止措置も重要な検討課題となります。


企業に求められる役割

外国人を雇用する企業にとって、この制度は外国人本人だけの問題ではありません。
報告書では、国が共通の日本語学習・生活学習コンテンツを提供することを前提として、外国人を受け入れる企業に対し、外国人本人とその家族への学習支援を、これまで以上に強く求める必要があるとされています。

具体的には、企業に次のような対応が求められる可能性があります。

・外国人従業員へのプログラムの案内
・受講状況の確認
・受講時間を確保するための勤務時間の調整
・オンライン学習に必要な端末や通信環境の支援
・家族を含めた生活学習の案内
・地方公共団体や日本語教育機関との連携
・在留期間更新前の受講状況の確認

PTのヒアリングでは、受入れ企業が勤務時間を調整し、外国人従業員が学習できる環境を整備する必要があるとの意見も示されています。
将来的にプログラムの受講が在留期間更新などの審査に影響することになれば、外国人本人が受講していなかったために、更新手続に支障が生じる可能性も考えられます。

企業としても、「本人に任せておけばよい」とするのではなく、在留管理と人材育成の一環として対応する必要が生じるでしょう。


すぐに義務化されるわけではない

今回の報告書は、法律や省令によって具体的な義務を定めたものではありません。
制度の対象者、学習時間、費用負担、受講方法、審査への反映方法などについては、今後、関係省庁や有識者との協議を踏まえて制度設計が行われます。

また、十分な試行期間を設け、試行結果や関係者からのフィードバックを踏まえて本格運用に移行することが望ましいとされています。

一方で、報告書では、制度の創設を「喫緊の課題」と位置付け、実施可能な部分から早期に運用を開始することも重視されています。

そのため、制度の具体化は比較的速いペースで進む可能性があります。


企業が今から確認しておきたいこと

現時点で、企業が直ちに新しい講習を実施しなければならないわけではありません。
ただし、今後の制度化に備え、次の点を確認しておくことが重要です。

・外国人従業員に現在どのような日本語学習支援を行っているか
・生活オリエンテーションの実施状況を記録しているか
・外国人従業員の家族への情報提供ができているか
・在留期間更新の管理と学習状況を連携できるか
・勤務時間内の受講を認める場合のルールをどうするか
・受講費用や教材費を企業と本人のどちらが負担するか
・特定技能、技能実習、育成就労などの既存制度との関係をどう整理するか

外国人の日本語能力や制度理解を高めることは、在留手続への対応だけでなく、職場内のコミュニケーション改善、労務トラブルの防止、安全管理、定着率の向上にもつながります。

今回のプログラムを単なる新たな規制として見るのではなく、外国人従業員が日本で安定して生活し、長期的に活躍するための人材育成施策として捉えることも必要です。