外国人雇用指針の見直しに着手か

令和8年3月に厚生労働省の「外国人雇用対策の在り方に関する検討会」が公表した資料(資料2-1)では、今後の外国人雇用に関する重要な方向性が示されました。
本記事では、企業の人事担当者が押さえるべきポイントを、入管実務の観点から整理します。

前提

まず前提として、この文書は法改正ではなく「課題整理(案)」です。
しかし、内容は今後の制度改正や監督強化の方向性を示すものであり、実務的には先取りして対応すべきレベルの重要性があります。

今回の検討会の背景には、外国人労働者の急増があります。
資料によれば、外国人労働者数は約257万人で、10年前の約91万人から約2.8倍に増加しています。
一方で、不法就労の絶対数自体は国際的に見て多くないとされるものの、「一部の違反行為」が社会的不安や不公平感を生んでいると明確に指摘されています。
つまり、問題は量ではなく「質」に移っているという認識です。


事業主責任の明確化

この前提のもと、最も重要な論点は「事業主責任の明確化」です。
検討会では、外国人雇用対策を実効的なものにするためには行政だけでは不十分であり、事業主による主体的な雇用管理が不可欠であると整理されています。
具体的には、在留資格の範囲内での就労管理、適正な労働条件の提示、法令遵守、職場トラブルの未然防止などは、すべて事業主の基本的責務とされています。
ここで重要なのは、「知らなかった」「任せていた」という言い訳が通用しにくくなる方向にある点です。


外国人雇用管理指針の見直し

次に、「外国人雇用管理指針」の見直しです。
現行の指針は法的拘束力がなく、実務では形式的に扱われる傾向がありますが、検討会では「内容のアップデートと周知徹底が極めて重要」と明記されています。
さらに一部では、指針ではなく法律による規律の必要性も指摘されています。
したがって、今後は指針の内容がより具体化され、実質的な遵守が求められる可能性が高く、従来の「努力義務」という理解では不十分になると考えるべきです。


外国人雇用状況届出制度の運用改善

実務への影響が最も大きいのは「外国人雇用状況届出制度の運用改善」です。
現行制度では、雇入れ時と離職時の届出のみですが、検討会ではこれでは実態把握として不十分とされ、年1回程度の定期報告の導入可能性が示唆されています。
また、未届や虚偽届出を行う事業主への厳格対応の必要性も明確にされています。
さらに、在留カードの確認についても、券面確認にとどまらず、出入国在留管理庁のアプリ等を活用した真偽確認の実務化が言及されており、「形式確認から実質確認へ」の転換が示されています。


不法就労対策

不法就労に関する点も重要です。
検討会では、資格外就労をさせた場合には不法就労助長罪に該当すること、また届出義務違反にも罰則があることを指針に明記すべきとされています。
これは単なる注意喚起ではなく、「企業責任の明確化」を意味します。
実務的には、採用時および在職中の在留資格確認の精度が問われることになり、特に業務内容と在留資格の適合性のチェックがこれまで以上に重要になります。


その他の留意点

また、特徴的なのは「一律規制強化ではない」という点です。
検討会では、すべての企業に過度な負担を課すべきではないとしつつ、「悪質な事業主や仲介業者への対応は厳格化すべき」とされています。
つまり、適正に運用している企業とそうでない企業の間で、監督や規制の強度に差がつく方向です。
これは裏を返せば、適正運用ができていない企業はリスクが一気に顕在化する可能性があるということです。


まとめ

以上を踏まえ、人事担当者が直ちに確認すべき実務ポイントは明確です。
第一に、在留資格の確認体制が形式的になっていないか(原本確認だけで終わっていないか)。
第二に、雇用状況届出に漏れや誤りがないか。
第三に、実際の業務内容が在留資格の範囲内に収まっているか。
第四に、紹介会社や送出機関の適正性を把握しているか。
第五に、外国人労働者がトラブルを相談できる体制があるか、です。

今回の検討会の本質は、「外国人雇用を拡大するフェーズから、適正管理を徹底するフェーズへの転換」にあると考えられます。

今後は、制度の有無ではなく、実際に適切に運用しているかどうかが問われる時代になります。
現時点では義務でなくとも、将来の規制強化を見据えて対応しておくことが、結果的にリスク回避につながります。

【人事担当者必読】特定技能「外食業」受入れ上限到達による運用変更(2026年4月13日以降)

2026年3月27日、出入国在留管理庁は、特定技能「外食業分野」に関する重要な運用変更を公表しました。
本記事では、外食関連企業の人事担当者が押さえるべき実務上のポイントを整理します。


背景:受入れ上限(5万人)到達見込み

外食業分野における特定技能1号の在留者数は、2026年2月末時点で約4.6万人に達しています。
このまま推移すると、2026年5月頃に受入れ上限(5万人)を超過する見込みとなりました。

これにより、以下の措置が講じられることとなります。


2026年4月13日以降の基本方針

(1)在留資格認定証明書(COE)申請
  • 4月13日以降の申請 → 不交付
  • 4月12日以前の申請 → 上限内で順次処理(ただし、変更申請を優先するため遅延見込み)

海外からの新規採用は事実上ストップ

(2)在留資格変更(他資格 → 特定技能)
  • 原則:4月13日以降は不許可
  • 例外的に許可されるケース:
    1. 特定技能1号(外食業分野)保有者からの申請(転職等に伴う申請)は通常どおり審査
    2. 技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)修了者…上限内で(優先処理)
    3. 特定活動(特定技能1号(外食業分野)への移行準備)からの移行者…上限内で

国内人材の切替も基本的に困難

※上記2、3の申請については、許可時点での在留者数の状況により、特定技能1号でなく、特定活動(特定技能1号移行準備)への変更または同在留資格での在留期間更新(更新は1回まで)を案内する場合がある。

(3)特定活動(特定技能1号(外食業分野)への移行準備)への変更
  • 原則:不許可
  • 例外あり(転職者・技能実習修了者等)

(4)在留期間更新
  • 従来どおり許可

既存人材の維持は可能


人事実務への影響(重要ポイント)

① 新規採用戦略の見直しが必須
  • 海外からの採用:停止
  • 国内切替:大幅制限

既存人材の確保・定着が最優先

② 採用済み案件の進捗確認
  • 4月12日以前に申請済みかどうかで運命が分かれる
  • 未申請の場合:実質的に採用不可

申請の前倒しが必要

③ 在留資格変更案件のリスク管理

  • 内定済み外国人の資格変更が不許可となる可能性

代替案(他在留資格)の検討が必要

④ 転職者の扱い

  • 既に特定技能(外食)で在留している人材は
    転職可能(通常審査)

他社からの採用(中途)は引き続き有効な手段


今後の見通し

今回の措置は、法律(入管法7条の2)に基づく「上限管理の厳格運用」です。
したがって、上限拡大(制度改正)または分野別枠の見直しなどが行われない限り、当面は新規受入れの厳しい制限が継続すると考えられます。


まとめ(人事戦略の転換が必要)

今回のポイントを一言で整理すると:

       「新規採用」から「既存人材維持・国内流動活用」へシフト

特に外食業界では、以下の対応が鍵になります。

  • 離職防止(待遇改善・教育)
  • 転職市場の活用
  • 他在留資格人材の活用

【2027年4月スタート】育成就労制度とは?運用要領から読み解く「技能実習」との違いとポイント

日本国内の深刻な人手不足を背景に、これまでの「技能実習制度」が幕を閉じ、2027年4月から新たに「育成就労制度」がスタートします。

「結局、何が変わるの?」「うちの会社はどう準備すればいい?」とお悩みの担当者様も多いはず。今回は、令和8年2月に発表された「運用要領」をベースに、重要ポイントをわかりやすく解説します。


制度の目的が「国際貢献」から「人材確保・育成」へ

これまでの技能実習は「技術を母国に持ち帰ってもらう(国際貢献)」という建前がありましたが、育成就労制度は「日本で長く働いてもらうための人材育成と確保」を正面から目的としています。
最大の特徴は、3年間の就労を通じて、在留資格「特定技能1号」の水準までスキルアップさせるという明確なロードマップがあることです。


現場が知っておくべき「3つの大きな変更点」

① 「本人意向の転籍(職場変更)」が可能に

技能実習では原則禁止されていた転籍が、以下の条件を満たせば認められます。

  • 同じ企業で1〜2年(分野により異なる)働いていること
  • 技能試験(初級等)と日本語試験(A1相当)に合格していること
  • 転籍先が一定の基準を満たす「優良な実施者」であること
    ※もちろん、ハラスメントや法令違反などの「やむを得ない事情」がある場合は即座に可能です。
② 報酬は「日本人と同等以上」が必須

育成就労外国人はあくまで「労働者」です。同じ業務に従事する日本人と比べて不当に低い賃金を設定することはできません。
また、技能の習得度合いに応じた昇給など、モチベーションを高める工夫も求められます。

③ 監理団体は「監理支援機関」へ

名称が変わるだけでなく、役割も強化されます。3か月に1回以上の監査、母国語での相談窓口設置、さらには「転籍」を希望する外国人へのキャリア支援などが義務付けられます。


受け入れ企業が準備すべき「3つのチェックリスト」

これから育成就労を始める、あるいは移行する企業様は、以下の準備が必要です。

  1. 役職者の選任と講習の受講
    • 「育成就労責任者」「育成就労指導員」「生活相談員」を選任する必要があります。
    • それぞれ3年ごとに「養成講習」を受講することが義務付けられています。
  2. 住環境の整備
    • 宿泊施設の基準が明確化されました。寝室は「1人当たり4.5平米以上」を確保し、私有物の収納設備(鍵付き)を設けるなどの配慮が必要です。
  3. 日本語学習のサポート
    • 3年間で特定技能1号レベル(A2相当)を目指すため、日本語講習(100時間以上)を受けさせるなどの措置を講じることが推奨されます。


厳格化された「禁止事項」と罰則

人権保護の観点から、以下の行為には厳しい罰則が科されます。

  • 強制労働: 暴行や脅迫による就労。
  • パスポート・在留カードの保管: 本人の同意があっても絶対NGです。
  • 外出・私生活の制限: 不当な門限や携帯電話の没収などは禁止です。
  • 違約金の設定: 「途中で辞めたら罰金」という契約は無効であり、罰則の対象です。


まとめ:選ばれる企業になるために

育成就労制度への移行は、単なる手続きの変更ではありません。
「外国人がキャリアを築ける環境をどう作るか」という、企業としての姿勢が問われるようになります。

転籍が自由化されるということは、魅力的な職場であれば長く働いてもらえますし、そうでなければ選ばれなくなってしまうということ。
今のうちから、教育体制や福利厚生を見直しておくことが、2027年以降の採用競争を勝ち抜く鍵となります。


今後のスケジュール

  • 令和9年(2027年)4月1日: 育成就労制度の本格施行。
  • 現行の技能実習生は、経過措置として一定期間そのまま在留可能です。

詳細な「分野別運用方針」や「具体的な申請書類」についてお困りの際は、お気軽に弊社までご相談ください!

外国人入国者数が過去最高に―入管庁「令和7年速報値」を読み解く

出入国在留管理庁は、令和7年(2025年)における外国人入国者数及び日本人出国者数等についての速報値を公表しました。
今回の速報では、外国人入国者数・新規入国者数ともに過去最高を記録しており、コロナ禍からの回復を明確に示す内容となっています。

本記事では、速報のポイントと、直近数年の推移を簡潔に整理します。


外国人入国者数・新規入国者数はいずれも過去最高

今回公表された速報値の中核は、次の2点です。

  • 外国人入国者数
    約4,243万人(前年比 約565万人増
  • 外国人新規入国者数
    約3,918万人(前年比 約517万人増

いずれも統計開始以来の過去最高となりました。

なお、ここでいう「外国人入国者数」は、

  • 新規入国者
  • 再入国者

の合計であり、「外国人新規入国者数」は、入国時に在留資格を受けて上陸した外国人を指します(観光客も含まれます)。
観光客やビジネス目的で初めて日本に入国する外国人の動向を把握する上で、特に重要な指標です。


直近3年でみる外国人新規入国者数の推移

速報値と確定統計を踏まえ、直近3年の新規入国者数を並べると次のとおりです。

  • 令和5年(2023年):約 2,375万人
  • 令和6年(2024年):約 3,402万人
  • 令和7年(2025年):約 3,918万人

令和5年から令和7年までの3年間で、新規入国者数は約65%増加しており、単なる「回復」を超えて、コロナ前を大きく上回る水準に達していることが分かります。


どの国からの入国者が最も増えているのか(国籍別動向)

国籍・地域別にみると、増加の特徴は二つに分けられます。

(1)増加率が最も高い国

直近3年(令和5年→令和7年)の増加率でみると、
ロシアが最も高く、約3.6倍(+約360%)となっています。
ただし、母数が比較的小さい国では、増加率が大きく出やすい点には注意が必要です。

(2)増加人数が最も多い国

一方、実数(増加人数)でみると、中国からの新規入国者の増加が突出しています。

  • 令和5年:約200万人
  • 令和7年:約722万人
  • 増加人数:約522万人

増加率・増加人数の両面を総合すると、量的な影響が最も大きいのは中国と評価するのが妥当でしょう。


「短期滞在」が圧倒的多数を占める点に注意

在留資格別にみると、外国人新規入国者の約98%は「短期滞在」です。
つまり、今回の急増は主として、

  • 観光
  • 短期商用
  • 親族訪問

といった短期目的の入国増によるものです。

そのため、

  • 在留外国人数
  • 労働力人口

の増加と直ちに同義ではない点は、政策・実務上、冷静に区別して捉える必要があります。


まとめ―「量の回復」から「質の分析」へ

今回の入管速報から読み取れるポイントは、次のとおりです。

  • 外国人入国者数・新規入国者数はいずれも過去最高
  • 直近3年で新規入国者数は約1.65倍
  • 国籍別では、
    • 増加率最大:ロシア
    • 増加人数最大:中国
  • 増加の大部分は短期滞在目的

今後は、単なる「人数の増減」だけでなく、

  • 在留資格別
  • 中長期在留への移行
  • 産業・地域への影響

といった質的な分析がより重要になってくると考えられます。


※本記事は、出入国在留管理庁が公表した「令和7年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(速報値)」等の統計資料に基づいて作成しています。

ウクライナ避難民の受入れ・支援の現状について(令和8年1月末時点)

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本では令和4年3月2日に総理が受入れを表明して以降、継続的にウクライナ避難民の受入れと支援が実施されています。
本記事では、最新の受入れ状況および在留資格・支援制度の概要を整理します。


受入れ人数の概要(速報値)

対象期間:令和4年3月2日~令和8年1月31日

◆ 総受入れ人数

2,868人

◆ 男女別内訳
  • 男性:864人
  • 女性:2,004人

女性の割合が約7割を占めており、家族単位での避難の実態がうかがえます。

◆ 年代別内訳
  • 18歳未満:385人
  • 18歳以上61歳未満:2,087人
  • 61歳以上:396人

生産年齢人口が多数を占める一方で、未成年者および高齢者も一定数含まれています。

◆ その他の状況
  • 入国時に身元引受先なし:473人
  • 令和8年1月の新規入国者数:15人
  • 令和8年1月31日時点の在留者数:1,967人

累計受入れ人数と在留者数に差があることから、帰国や第三国移動、在留資格変更などの動きもあると推察されます。
※本統計は、侵攻により避難を目的として令和4年3月2日以降にウクライナ又は第三国から入国した方を計上したものです。


補完的保護対象者認定制度による支援

日本では、従来の難民認定制度に加え、補完的保護対象者認定制度が令和5年12月1日より開始されました。

◆ 認定者数
  • 令和5年:1人
  • 令和6年:1,618人

※侵攻以前から在留していた者や避難以外の目的で入国した者も含まれます。


認定後の主な支援内容

(1)安定した在留資格

補完的保護対象者として認定された場合、原則として在留資格「定住者(5年)」への変更が可能です。
中長期的な在留の安定が図られています。


(2)定住支援プログラム

自立支援を目的とした体系的なプログラムが用意されています。

  • 日本語教育:572時限(1時限45分)
  • 生活ガイダンス:120時限
  • ハローワークを中心とした就労支援
  • 生活相談員による各種相談対応
  • 情報提供(ハンドブック配布等)
  • 宿泊施設の提供
  • 生活支援

単なる滞在許可にとどまらず、社会統合を前提とした包括的支援が実施されている点が特徴です。


政府の体制

受入れは、関係省庁横断で組織的に行われています。

  • ウクライナ避難民対策連絡調整会議
  • 対応タスクフォース
  • 法務省受入れ支援対策本部
  • 出入国在留管理庁プロジェクトチーム
  • 地方出入国在留管理官署の専任担当

制度整備と実務対応の両面から支援体制が構築されています。


在留資格からの視点

ウクライナ避難民支援に関しては、

  • 在留資格「特定活動」からの変更
  • 補完的保護対象者認定申請
  • 定住者への変更手続
  • 家族滞在や就労関係の在留手続
  • 生活基盤整備に伴う各種行政手続

など、入管実務上の専門的対応が必要となる場面が多く存在します。
特に、制度開始以降は補完的保護対象者認定制度の活用が実務上重要となっています。制度趣旨・要件・立証資料の整理など、専門的判断が求められます。


まとめ

令和8年1月末時点で2,868人を受け入れ、現在も約2,000人が在留しています。
制度面では補完的保護対象者認定制度が本格運用され、安定した在留資格と定住支援体制が整備されました。

今後も情勢に応じて制度運用の動向を注視するとともに、適切な情報の収集が重要です。

【解説】「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」とJESTA導入の意味

2026年1月23日、政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定しました。この中で明確に打ち出されたのが、電子渡航認証制度(JESTA)の導入方針(2028年度中)です。

会議決定におけるJESTAの位置付け

官邸資料では、JESTAは

「出入国管理DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の推進

の一環として整理されています。
つまり、制度趣旨は単なる渡航手続の簡素化ではなく、

  • 入国前のリスクスクリーニング強化
  • 出入国情報のデータ活用高度化
  • 審査の効率化と厳格化の両立

という政策目的の中に位置付けられています。在留資格制度の改正とは別次元の、「入国前審査の高度化」が本質です。


何が変わるのか

対象は、ビザ免除国の短期滞在者と想定されています。

従来は「査証不要」で来日可能でしたが、今後は

  • オンラインで事前申請
  • 政府側の事前審査
  • 承認取得後に渡航

という流れになる見込みです。
これは、米国のESTAと類似する枠組みと理解できます。


実務上の影響

行政書士の立場から見ると、影響は次の点に及びます。

(1)入国前段階の支援需要の拡大

短期滞在であっても、

  • 申請内容の整合性確認
  • 過去出入国歴との整合
  • 不許可リスクの事前分析

といった支援が重要になります。


(2)データ連携強化の可能性

「出入国管理DX」が強調されている以上、

  • 出入国履歴
  • 在留履歴
  • 将来的な在留資格申請

との情報連携が進む可能性があります。
JESTAでの申請情報が、その後の在留審査に影響する制度設計となる可能性も否定できません。


(3)不許可時の法的論点

現時点では詳細未定ですが、今後の立法過程では

  • 不承認理由の開示範囲
  • 不服申立ての可否
  • 再申請の取扱い

などが重要論点になると考えられます。


現時点の法的状況

  • 導入目標:2028年度中
  • 具体的根拠法:未成立
  • 制度詳細:今後の立法で確定

したがって、現段階では方針決定にとどまります。


まとめ

今回の会議決定により、JESTAは

「秩序ある受入れ」を実現するための入国前審査制度として正式に政策化

されました。

今後の実務は、

  • 在留資格中心の支援
    から
  • 入国前リスク管理を含む包括支援

へと拡張していく可能性があります。
制度設計の具体化を注視する必要があります。

【令和8年3月9日運用開始】在留資格「技術・人文知識・国際業務」派遣形態就労に係る取扱い変更について

令和8年2月、出入国在留管理庁より、在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって派遣形態で就労する場合の取扱いに関する通知が公表されました。

本取扱いは、令和8年3月9日申請分から適用されます。本記事では、通知の内容に沿って整理します。


提出書類の変更(令和8年3月9日申請分から)

派遣形態で就労する場合、提出書類が変更されました。
通知のチェックシートでは、派遣契約に基づいて就労する場合(申請人が被派遣者の場合)の提出書類が明示されています。

(1)誓約書(参考様式)
  • 所属機関(派遣元)用
  • 派遣先用

いずれも提出が必要です。

(2)派遣契約関係資料
  • 労働条件通知書(雇用契約書)の写し
  • 労働者派遣個別契約書の写し
(3)在留期間更新許可申請の場合の追加資料

更新申請では、上記に加えて以下の資料が求められます。

  • 派遣元管理台帳
  • 派遣先管理台帳
  • 就業状況報告書

これらは、派遣契約に基づいて就労する場合に提出が必要とされています。


カテゴリーとの関係

通知の提出書類一覧では、カテゴリー1からカテゴリー4まで区分されています。
派遣契約に基づいて就労する場合の資料(誓約書・派遣契約関係資料等)は、カテゴリーの別にかかわらず提出対象とされています。したがって、派遣形態である場合には、カテゴリーに関係なく当該資料の提出が必要となります。


派遣先未確定の場合の取扱い

通知では、次のとおり明示されています。

申請時点において派遣先が確定していない場合は、在留諸申請の許可等を受けることができません。

そのため、派遣形態で申請を行う場合には、申請時点で派遣先を確定させる必要があります。


在留期間の決定

通知では、

派遣形態で就労する場合は、派遣契約期間に応じた在留期間が決定されます。

とされています。


派遣先への確認

通知では、在留審査の際に、

派遣会社(派遣元)のほか、派遣先に対しても申請人の業務内容や活動状況について直接確認を行う場合があります。

とされています。


まとめ

令和8年3月9日以降、在留資格「技術・人文知識・国際業務」において派遣形態で就労する場合には、

  • 派遣関連書類の提出
  • 派遣先の確定
  • 派遣契約期間に応じた在留期間の決定
  • 派遣先への確認の可能性

といった取扱いが明示されています。
申請に当たっては、通知及び別添チェックシートの内容を確認の上、必要書類を整備する必要があります。

【2026年2月時点】外国人による土地・不動産取得と「国籍把握」―何がどう変わるのか

近年、外国人や海外資本による日本の土地・不動産取得をめぐり、「実態が分からない」という問題意識が政府内で共有されてきました。これを受けて、2025年後半から政府は、規制強化に先立ち、まず“国籍等を把握する仕組み”を整える方向で、土地関連制度を横断した見直しを進めています。

本記事では、どの制度で・どのように国籍等が把握されるようになるのかを簡潔に整理します。


政策の全体像

現在進んでいるのは、登記・届出・報告の各制度の「入口」で国籍等を取得し、行政内で横断的に実態把握できるようにする
というデータ基盤整備です。
「外国人の土地取得を直ちに制限する」議論というより、誰が取得しているのかを把握できる状態を作ることが主眼です。


制度別の動き(要点)

① 不動産登記
  • 登記簿に国籍を載せるわけではない
  • 所有権移転等の登記申請情報に申請人の国籍を追加する方向
  • 実施時期:令和8年度中以降(予定)

→ 行政が実態把握に使うための情報であり、公開情報の拡張ではないと思われます。

② 森林法(最も具体化)
  • 森林の土地所有者届出に国籍等を追加
    • 施行:2026年4月1日
  • 林地台帳にも国籍等を記載
    • 施行:2027年4月1日

法人の場合は、

  • 設立準拠法国
  • 代表者の国籍
  • 役員・議決権の過半が同一国籍ならその国籍
    まで把握する設計です。

③ 国土利用計画法(大規模土地取引)
  • 事後届出事項に、法人の実質的な国籍関与を追加
  • 代表者国籍、役員・議決権の過半国籍などを届出
  • 施行予定:2026年4月1日

④ 重要土地等調査法
  • 注視区域等での届出において、法人の国籍等把握を強化
  • 基本的な考え方は森林法・国土利用計画法と共通

⑤ 外為法(国外居住者)
  • 国籍ではなく「非居住者(国外居住者)」という切り口
  • 不動産取得の報告義務を、投資目的に限らず目的不問に拡大
  • 施行予定:2026年4月1日


共通ポイント

今回の制度改正群に共通する特徴は次の3点です。

  1. 個人よりも法人名義への対応が重視されている
    → 日本法人を使った取得でも「実質的にどの国が関与しているか」を把握
  2. 登記簿そのものは極力触らない
    → 登記申請情報や届出情報で把握し、行政内で活用
  3. 規制強化の前段階としての実態把握
    → 国際約束(投資協定等)との関係を踏まえ、まずデータ整備を優先


まとめ

2026年2月時点で進んでいるのは、

     外国人・国外居住者・実質的に外国関与のある法人による土地・不動産取得について、
     各制度の入口で国籍等を取得し、行政が横断的に把握できる仕組みを整える動き

です。

今後の焦点は、この「把握されたデータ」を前提に、どこまで利用・規制に踏み込むのかに移っていくと考えられます。

在留管理は外国人本人だけの問題ではありません ― 企業が受ける重大なペナルティと信用リスク ―

外国人材の採用が進む中で、「在留資格と実際の業務内容の関係」について、十分に理解されないまま雇用が進んでいるケースを見かけることがあります。
悪意があるわけではなく、「これくらいなら問題ないだろう」「一時的な対応だから大丈夫だろう」と考えてしまうことも、決して珍しくありません。
しかし、在留資格のルールは想像以上に厳格であり、知らないうちに会社側がリスクを抱えてしまう可能性がある点には注意が必要です。


在留資格には「できる仕事の範囲」が決められています

外国人が日本で働く場合、それぞれの在留資格ごとに従事できる業務内容が明確に定められています
この範囲を超えた業務に従事させてしまうと、

  • 外国人本人だけでなく
  • 雇用している会社側も

入管法上の責任を問われる可能性があります。
「会社として意図していなかった」場合であっても、実態としてどのような業務に従事していたかが判断の基準になります。


「技術・人文知識・国際業務」は現場作業に注意が必要です

就労の在留資格でもメジャーな「技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)」は、

  • 技術職
  • 企画・事務系業務
  • 国際的な業務

など、専門性を活かす業務が想定されています。
そのため、

  • 工場での生産作業
  • 単純作業
  • 清掃や梱包作業

といった業務については、原則として対象外とされます。
「人手が足りない時間帯だけ手伝ってもらう」というケースは認められませんので、慎重な判断が求められます。


最近、技人国と業務内容の不一致が報道されるケースが増えています

近年のニュースでは、

  • 技人国で在留している外国人が
  • 生産現場などで実際には作業を行っていた

という理由で、会社関係者が摘発された事例が報道されることが増えています。
多くの場合、「制度への理解不足」「現場との情報共有不足」が背景にあるように見受けられます。


報道されることで生じる、会社のイメージへの影響

法的な問題以上に、企業にとって見逃せないのが対外的なイメージへの影響です。

一度報道されると、

  • 取引先や顧客からの印象
  • 採用活動への影響
  • 社内外からの信頼

など、目に見えないダメージが長く残ることも少なくありません。
「知らなかった」では済まされない、という点が、外国人雇用の難しさでもあります。


外国人材の業務管理は「定期的な確認」がとても大切です

外国人材を安心して活用するためには、

  • 在留資格と業務内容が合っているか
  • 配属先・業務内容に変更がないか
  • 現場でもルールが共有されているか

といった点を、定期的に確認することが重要です。
少しでも判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することが、結果的に会社を守ることにつながります。


まとめ

外国人材の雇用は、企業にとって大きな可能性をもたらします。
その一方で、在留資格のルールを正しく理解しておくことが、長く安心して外国人材と働くための前提条件になります。

「今の業務内容は問題ないだろうか?」と感じたときが、確認のタイミングです。
トラブルを未然に防ぐためにも、外国人材の業務管理について、ぜひ一度見直してみてください。

目視だけで大丈夫ですか?在留カード等読取アプリケーションの実務的な使い方

在留カード等読取アプリケーションの実務的な使い方

外国人材を採用・雇用している企業にとって、在留カードの確認は必須の実務です。

とはいえ、

  • 見た目は問題なさそう
  • 毎回同じ社員だから大丈夫
  • 期限だけ確認して終わり

このような運用になっていないでしょうか。

近年は在留カードの偽造・変造が巧妙化しており、目視確認だけではリスクを完全に排除できないのが実情です。

そこで今回は、出入国在留管理庁が公式に提供している「在留カード等読取アプリケーション」について、人事実務の視点から分かりやすく解説します。


在留カード等読取アプリケーションとは?

このアプリは、

  • 在留カード
  • 特別永住者証明書

に内蔵されているICチップの情報を読み取る公式アプリです。

アプリでできること
  • ICチップ内の情報(氏名・生年月日・在留資格・在留期間・顔写真など)を読み取り
  • その内容を画面上に表示
  • 券面に印字されている内容と照合することで、偽変造の疑いを確認

ポイントは、「券面」と「ICチップ」の一致を確認できる点にあります。


なぜ人事担当者にとって重要なのか

① 採用時の確認を「より確実」にできる

外国人を採用する際、在留カードの確認は必須です。
しかし、券面の見た目だけでは判断できないケースも増えています。

このアプリを使えば、

  • ICチップの情報と券面の記載が一致しているか
  • 顔写真に不自然な違いがないか

客観的に確認できます。 ※ 利用時は、他の身分証確認と同様、本人の同意を得た上で行う必要があります。

② 不法就労リスクへの備えになる

企業が知らないうちに在留資格外の外国人を雇用してしまった場合、不法就労助長罪が問題となる可能性があります。

公式アプリを利用して確認していれば、

  • 企業として必要な確認を行っている
  • 管理体制が整っている

ことを説明しやすく、コンプライアンス強化にもつながります。


「失効情報照会」との併用が実務では重要

このアプリで分かるのは、
「カード自体が真正かどうかです。

一方で、その在留カードが現在も有効かどうかを確認するには、在留カード等番号失効情報照会を併用する必要があります。

そのため、読取アプリでカードの真正性確認、失効情報照会で有効・失効の確認の 両方で確認して初めて安心と言える運用です。


導入は難しい?利用環境について

対応OS
  • Windows 11
  • macOS 13以降(Apple M1以降)
  • Android 12以降
  • iOS 16以降

iPadは非対応です。

準備するもの
  • パソコン利用の場合
    → 非接触型ICカードリーダライタ(拡張APDU対応)
  • スマートフォン利用の場合
    → NFC Type B対応端末(追加機器不要)

特別なシステム開発は不要で、無料で導入できる点も大きなメリットです。


まとめ

在留カード等読取アプリケーションは、

  • 出入国在留管理庁が公式に提供
  • 無料で利用可能
  • 人事実務に直結するツール

という点で、外国人雇用を行う企業にとって非常に有用です。

トラブルが起きてから対応するのではなく、「起きないための確認」として、ぜひ導入・活用を検討してみてください。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。
具体的な事案については、専門家へのご相談をおすすめします。