ビザジャーナル
2026-04-09
外国人雇用指針の見直しに着手か

令和8年3月に厚生労働省の「外国人雇用対策の在り方に関する検討会」が公表した資料(資料2-1)では、今後の外国人雇用に関する重要な方向性が示されました。
本記事では、企業の人事担当者が押さえるべきポイントを、入管実務の観点から整理します。
前提
まず前提として、この文書は法改正ではなく「課題整理(案)」です。
しかし、内容は今後の制度改正や監督強化の方向性を示すものであり、実務的には先取りして対応すべきレベルの重要性があります。
今回の検討会の背景には、外国人労働者の急増があります。
資料によれば、外国人労働者数は約257万人で、10年前の約91万人から約2.8倍に増加しています。
一方で、不法就労の絶対数自体は国際的に見て多くないとされるものの、「一部の違反行為」が社会的不安や不公平感を生んでいると明確に指摘されています。
つまり、問題は量ではなく「質」に移っているという認識です。
事業主責任の明確化
この前提のもと、最も重要な論点は「事業主責任の明確化」です。
検討会では、外国人雇用対策を実効的なものにするためには行政だけでは不十分であり、事業主による主体的な雇用管理が不可欠であると整理されています。
具体的には、在留資格の範囲内での就労管理、適正な労働条件の提示、法令遵守、職場トラブルの未然防止などは、すべて事業主の基本的責務とされています。
ここで重要なのは、「知らなかった」「任せていた」という言い訳が通用しにくくなる方向にある点です。
外国人雇用管理指針の見直し
次に、「外国人雇用管理指針」の見直しです。
現行の指針は法的拘束力がなく、実務では形式的に扱われる傾向がありますが、検討会では「内容のアップデートと周知徹底が極めて重要」と明記されています。
さらに一部では、指針ではなく法律による規律の必要性も指摘されています。
したがって、今後は指針の内容がより具体化され、実質的な遵守が求められる可能性が高く、従来の「努力義務」という理解では不十分になると考えるべきです。
外国人雇用状況届出制度の運用改善
実務への影響が最も大きいのは「外国人雇用状況届出制度の運用改善」です。
現行制度では、雇入れ時と離職時の届出のみですが、検討会ではこれでは実態把握として不十分とされ、年1回程度の定期報告の導入可能性が示唆されています。
また、未届や虚偽届出を行う事業主への厳格対応の必要性も明確にされています。
さらに、在留カードの確認についても、券面確認にとどまらず、出入国在留管理庁のアプリ等を活用した真偽確認の実務化が言及されており、「形式確認から実質確認へ」の転換が示されています。
不法就労対策
不法就労に関する点も重要です。
検討会では、資格外就労をさせた場合には不法就労助長罪に該当すること、また届出義務違反にも罰則があることを指針に明記すべきとされています。
これは単なる注意喚起ではなく、「企業責任の明確化」を意味します。
実務的には、採用時および在職中の在留資格確認の精度が問われることになり、特に業務内容と在留資格の適合性のチェックがこれまで以上に重要になります。
その他の留意点
また、特徴的なのは「一律規制強化ではない」という点です。
検討会では、すべての企業に過度な負担を課すべきではないとしつつ、「悪質な事業主や仲介業者への対応は厳格化すべき」とされています。
つまり、適正に運用している企業とそうでない企業の間で、監督や規制の強度に差がつく方向です。
これは裏を返せば、適正運用ができていない企業はリスクが一気に顕在化する可能性があるということです。
まとめ
以上を踏まえ、人事担当者が直ちに確認すべき実務ポイントは明確です。
第一に、在留資格の確認体制が形式的になっていないか(原本確認だけで終わっていないか)。
第二に、雇用状況届出に漏れや誤りがないか。
第三に、実際の業務内容が在留資格の範囲内に収まっているか。
第四に、紹介会社や送出機関の適正性を把握しているか。
第五に、外国人労働者がトラブルを相談できる体制があるか、です。
今回の検討会の本質は、「外国人雇用を拡大するフェーズから、適正管理を徹底するフェーズへの転換」にあると考えられます。
今後は、制度の有無ではなく、実際に適切に運用しているかどうかが問われる時代になります。
現時点では義務でなくとも、将来の規制強化を見据えて対応しておくことが、結果的にリスク回避につながります。