ビザジャーナル

2025-10-23

育成就労制度における「本人意向による転籍制限(案)」の議論


2025年9月17日に開催された第7回 特定技能制度及び育成就労制度の基本方針・分野別運用方針に関する有識者会議において、「育成就労制度における本人意向による転籍制限(案)」が示されました。
今回は、この転籍制限(案)についてポイントを整理してご紹介します。


育成就労制度とは?

育成就労制度とは、外国人材を3年間の就労を通じて計画的に育成し、最終的に「特定技能」への移行を可能とする仕組みです。
従来の技能実習制度を見直し、「人材育成」と「労働力確保」の両立を目指す新制度として導入が決定されました。


転籍(受入れ先変更)に関する新たな制限案

これまで、倒産・ハラスメントなどやむを得ない事情がある場合に転籍が認められていましたが、本人の希望による転籍についてもルールが設けられる方向で検討されています。主なポイントは以下の通りです。

  • 転籍制限期間:分野ごとに 1年~2年 の範囲で設定
  • 制限期間中は本人希望による転籍ができない(ただし不当な扱いがあれば例外あり)
  • 特定技能への移行時には追加要件あり(日本語能力や技能試験合格など)


分野ごとの転籍制限と追加要件(例)

分野転籍制限特定技能への移行要件
介護1年特定技能試験必須(従来通り)
外食業2年日本語A2水準以上
農業・漁業2年日本語A2水準以上
建設・製造関連2年技能実習修了試験または技能検定合格

以上の制限が検討されています。

※A2水準=日常的な会話がある程度可能なレベル


企業人事担当者にとってのポイント

  1. 短期離職リスクの軽減
    転籍制限により、採用した人材が短期間で辞める可能性が減少し、計画的な人材育成が可能になります。
  2. 日本語教育・技能試験対策が必須に
    特定技能への移行要件として「日本語A2水準」や「技能試験合格」が求められる分野が多いため、企業内での教育体制強化が重要になります。
  3. 労務管理と適正な受入れ体制の確保
    転籍が制限される一方で、不当な労働環境があれば例外的に転籍が認められるため、労務管理の透明性・適正性が一層重視されます。


今後の見通し

この「転籍制限案」はまだ検討段階ですが、育成就労制度の導入を検討している企業にとっては大きな影響を持つ内容です。
特に、採用計画・教育体制・労務管理の在り方を見直すきっかけになるのではないでしょうか。