ビザジャーナル
2026-08-27
強制退去手続中の外国人情報を自治体へ―入管庁が「プッシュ型」の情報提供を開始

2026年8月8日付の読売新聞の記事によると、出入国在留管理庁は、退去強制手続中で居住している外国人の情報を、居住先の市町村に定期的に提供する新たな運用を2026年7月から開始しました。
これまでも、市町村から照会があった場合などには情報提供が行われていましたが、今回の変更では、市町村からの照会を待つのではなく、入管庁側から対象となる市町村に情報を提供する「プッシュ型」の仕組みが採用されています。
なぜ、このような仕組みが導入されたのか
背景にあるのは、退去強制手続中であっても、すべての外国人が入管施設に収容されているわけではないという事情です。
現在の入管制度では、一定の場合には「監理措置」により監理人の監督の下で施設外で生活することができます。
また、「仮放免」により収容が一時的に解除され、地域で生活している外国人もいます。
ところが、こうした人について、地方自治体側では誰が地域内に居住しているのかを十分に把握できていないことが課題となっていました。
政府が2026年1月23日に決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」でも、被仮放免者等について、出入国在留管理庁と市区町村との間で、より適切な情報共有を図ることが方針として示されていました。
さらに、出入国在留管理基本計画では、この情報提供は、「被収容者の適切な処遇の確立と監理措置制度の適正な運用」に関する施策の一つとして位置付けられています。
同計画では、被仮放免者や被監理者の条件違反等に適切に対応すること、そのために警察と入管との情報連携を行うことに続けて、市区町村へのプッシュ型情報提供が掲げられています。
したがって、今回の仕組みは、単に自治体の行政サービスにつなげるための制度というより、退去強制手続中で地域に居住する外国人について、国と地方自治体との間で情報共有を強化し、その所在や状況を適切に把握できるようにすることが中心的な目的と考えられます。
2026年7月から実際に始まったこと
読売新聞によれば、2026年7月から、退去強制手続中の外国人が新たに居住することとなった市町村に対し、入管庁から、氏名、住所、国籍、生年月日などの情報が毎月提供されるようになりました。
また、情報の更新漏れを防ぐため、毎年6月時点で各自治体に居住している対象者全員の情報を一覧で提供する運用も行われるとされています。
冒頭で説明したように、従来は本人の同意を得た上で情報提供することが基本であり、市町村側から照会すれば本人の同意がない場合でも情報を得られる制度もありましたが、利用は限定的でした。
今回の変更により、自治体が自ら照会しなくても、入管庁から情報が届く仕組みに変わったことになります。
今後はどうなるのか
ここからは、現在公表されている政府資料から読み取れる今後の方向性です。
今回の情報提供の方法が、現在の形で固定されたわけではありません。
出入国在留管理基本計画では、プッシュ型の情報提供を開始した後、その利用実態を踏まえて「共有方法や頻度など、更なる対応を検討する」とされています。
さらに、市区町村が抱えている被仮放免者等に関する問題を把握し、その実態を踏まえて、国としてさらに対応を検討するとしています。
つまり、今回の2026年7月の運用開始は、情報連携の完成形というより、今後の制度運用を検討するための第一段階と見ることができます。
今後は、実際に自治体が提供された情報をどのように利用しているのか、自治体側でどのような問題が発生しているのかを確認した上で、情報提供の頻度や方法、入管庁と自治体との連携方法が見直される可能性があります。
また、政府は「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」を進めており、被仮放免者については動静監視や不法就労への対応も強化しています。2026年5月には、このプランをさらに強力に推進するための施策も公表されています。
政府資料では、市区町村からの相談などにより被仮放免者等の条件違反が疑われる場合には、必要な調査を行うことも示されています。
そのため、自治体への情報提供と、自治体から入管庁への情報提供・相談という双方向の情報連携が、今後さらに強化されていく可能性があります。
もっとも、現時点で、自治体に提供する個人情報の項目をさらに増やすことや、自治体に新たな報告義務を課すことまで決定されているわけではありません。
今後のポイントは、今回始まった情報提供が実際にどのように利用され、その結果を受けて政府がどこまで情報共有の仕組みを拡充していくのか、という点になるでしょう。
※読売新聞の記事については、記事の内容を要約して紹介しており、記事本文の転載はしていません。また、「今後」の部分については、公表されている政府資料に示された検討方針を基に、今後想定される方向性を整理しています。