ビザジャーナル
2026-08-06
外国人雇用は「申請書類を見る審査」から「実態を見る在留管理」へ

出入国在留管理庁から、「第二次出入国在留管理基本計画」が公表されました。
この「基本計画」は、個々の在留資格の要件を直接定める省令や告示ではありません。
入管法に基づき、今後の外国人の入国・在留に関する施策の基本となる方針を法務大臣が定めるものです。つまり、これから入管行政がどちらの方向へ進んでいくのかを読むための重要な資料です。
今回の基本計画を外国人雇用の実務という観点から読んでいて、特に重要だと感じるのが、外国人の在留資格を「申請したときの書類」だけで判断するのではなく、日本で実際にどのような活動をしているのかを継続的に把握していくという方向性です。
もちろん、これまでも在留資格の許可後に何をしてもよかったわけではありません。
ただ、今回の基本計画では、「本邦に在留する全ての外国人について適正な在留管理」を行うことが大きな政策の柱として掲げられています。
概要では、デジタル技術を活用した出入国審査、適正な在留管理、外国人との秩序ある共生、退去強制手続・不法滞在対策などが、今後の基本的な方向として整理されています。
これは、外国人を雇用する企業にとっても決して他人事ではありません。
「申請のときだけ整っていればよい」ではなくなる
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の外国人を採用するとします。
従来から、
「大学で何を専攻したのか」
「会社でどのような仕事をさせるのか」
「その仕事は専門的な知識を必要とするものなのか」
といった点は審査されてきました。
そのため企業としては、雇用契約書、職務内容説明書、会社案内などを用意して、「この外国人にはこの仕事をしてもらいます」と説明してきたわけです。
しかし、今後より重要になるのは、「申請書にそう書いてあったか」ではなく、「本当にその仕事をしているのか」という点です。
実際、現在の在留管理制度でも、外国人本人や受入れ企業について所属機関に関する届出制度が設けられており、受入れの開始・終了などの情報が入管に入る仕組みがあります。
届出が適切に行われていない場合には、在留期間更新時に事実関係を確認するなど、審査を慎重に行うことがあることも明示されています。
つまり、在留資格はもともと「許可を取ったら終わり」の制度ではありません。
今回の基本計画は、その考え方をさらに進め、許可後を含めた在留期間全体について実態を把握する方向を明確にしていると読むことができます。
最近の「技人国」の変更も、この流れで見ると分かりやすい
ここで思い出していただきたいのが、2026年4月15日から始まった「技術・人文知識・国際業務」の申請書類の変更です。
カテゴリー3・4の企業については、「所属機関の代表者に関する申告書」が追加されました。
さらに、翻訳・通訳等を含め、主に言語能力を用いる対人業務に従事する場合には、業務上使用する言語について原則としてCEFR B2相当の言語能力を証明する資料も求められるようになっています。
これは単純に「提出書類が2枚増えた」という話として見るべきではないと思います。
申請人本人だけではなく、外国人を雇用する会社側にも、申請内容についてより明確に説明してもらう。
その方向への変化と考えた方が分かりやすいでしょう。
特に「技術・人文知識・国際業務」は、同じ「営業」「接客」「マーケティング」「ホテル業務」という名称でも、実際の仕事の内容によって在留資格該当性が変わります。
求人票には「海外営業」と書いてある。
雇用契約書にも「海外営業」と書いてある。
しかし実際には、ほとんどの時間を商品の陳列やレジ業務に費やしている。
このような場合、書類上の職種名だけではなく、実際にどのような業務に従事しているのかが問題になります。
入管だけが持っている情報で審査する時代でもなくなる
もう一つ重要なのが、行政機関間の情報連携です。
政府は以前から、正確な情報に基づく円滑な審査と適正な在留管理を目的として、関係行政機関間の情報連携を進める方針を示しています。マイナポータル等を利用した情報取得の拡大や、マイナンバーカードと在留カードの一体化なども進められてきました。
この方向が進めば、在留審査は徐々に、「外国人や会社から提出された資料だけを確認する審査」から、「行政側が保有している各種情報との整合性も確認する審査」へ変わっていきます。
これは非常に大きな変化です。
例えば、
申請書では正社員となっているが、実際の給与支払状況はどうなのか。
会社は社会保険の必要な手続を行っているのか。
届出上の所属先と実際の就労先は一致しているのか。
申請時に説明した業務と、その後の勤務実態は一致しているのか。
こうした情報が互いにリンクして確認されるようになれば、申請書だけをきれいに作ることの意味は次第に小さくなります。
なお、どの行政情報が、いつから、どの在留資格の審査で具体的に利用されるかまで今回の基本計画によって一律に決まったわけではありません。
ここは、「現在すでに全ての情報が入管に自動連携されている」と誤解しないよう注意が必要です。
厳格化だけが目的ではない
もっとも、今回の基本計画を「外国人に対する取締り強化計画」とだけ理解するのも正確ではありません。
政府は一方で、日本の経済社会を支える外国人材を受け入れ、外国人との「秩序ある共生社会」を実現することも重要な政策として位置付けています。
その一環として、外国人が日本語や日本の制度・生活上のルール等を学ぶ「日本語・生活学習プログラム(仮)」についても、具体的な検討が進められています。
2026年7月に公表された法務大臣政務官PTの報告書では、2026年1月に取りまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を受けて、このプログラムについて具体的な検討を進めてきたことが説明されています。
したがって、政策全体の方向性は、ルールを守って日本で生活・就労する外国人については、受入れや社会適応を円滑にする。
その一方で、在留資格の内容と実際の活動が異なる場合や、必要な義務を履行していない場合については、実態を把握し、適正に対処する。
というものだと考えた方がよいでしょう。
「円滑化」と「厳格化」を同時に進めるわけです。
外国人を雇用する企業が考えるべきこと
企業側に求められる対応も変わってきます。
これまでは外国人採用の際、「この人は技人国を取れるか」という入口の確認が中心だったかもしれません。
しかし今後は、「この人を、この在留資格のまま適正に雇用し続けることができるか」という視点がより重要になります。
外国人を採用した後、配置転換をする。
仕事内容を変更する。
別の事業所へ異動させる。
派遣先を変更する。
兼務させる。
こうした人事上はごく普通の変更が、外国人の場合には在留資格との関係で問題になることがあります。
したがって、外国人雇用の管理も、採用時の在留資格チェックだけではなく、採用 → 配属 → 業務変更 → 異動 → 更新 → 退職まで、一連の人事管理として考える必要があります。
「申請書を作る」から「適正な雇用状態を作る」へ
第二次出入国在留管理基本計画を読んで、外国人を雇用する企業にとって最も重要なのはここだと思います。
これからの在留管理では、申請書に何と書いたかだけではなく、その外国人が実際にどう働いているのかがますます重要になります。
申請時だけ在留資格に合う仕事を用意して、その後は別の仕事をさせる。
職務内容説明書だけ専門的な業務にして、実際には単純作業を中心にさせる。
そのような運用は、今後ますますリスクが高くなるでしょう。
外国人雇用について企業が考えるべきことは、「どうすれば在留資格の許可を取れるか」だけではありません。
許可された在留資格と実際の雇用・就労の状態を、どう一致させ続けるか。
第二次出入国在留管理基本計画は、日本の在留管理がその方向へ進んでいることを、かなり明確に示しているように思います。