ビザジャーナル

2026-07-23

「未経験可・すぐに慣れます」という求人は要注意


外国人材を「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で採用する場合、企業は、本人の学歴や職歴だけでなく、実際に担当させる業務が一定水準以上の専門性を必要とするものであるかを確認しなければなりません。
出入国在留管理庁が公表している「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(最終改定令和8年4月)には、次のような記載があります。

一般的に、求人の際の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載のあるような業務内容や、後述の上陸許可基準に規定される学歴又は実務経験に係る要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容は、対象となりません。

この記載は、外国人採用を行う企業の人事担当者にとって、非常に重要な意味を持ちます。


「未経験可」と書いたら直ちに不許可になるわけではない

まず注意したいのは、求人票に「未経験可」と記載しただけで、直ちに「技術・人文知識・国際業務」が認められなくなるわけではないという点です。
大学等で必要な専門知識を身につけている人材について、実務経験がないことを理由に「未経験可」とする求人もあります。
また、入社後に企業固有のシステム、取引ルール、商品知識等を習得してもらうことも一般的です。

したがって、問題となるのは「未経験可」という文言そのものではありません。
重要なのは、専門的な知識がなくても、短期間の説明や反復訓練によって誰でも従事できる業務なのではないかと評価されるような求人内容になっていないかという点です。


審査では「業務の実態」が確認される

「技術・人文知識・国際業務」は、単に外国人が会社で働くための一般的な在留資格ではありません。
この在留資格で認められるのは、自然科学又は人文科学の分野に属する技術若しくは知識を必要とする業務や、外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務です。

つまり、業務には、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門性が求められます。

そのため、在留資格の審査では、職種名だけでなく、具体的な業務内容が確認されます。
例えば、求人票に次のような表現が並んでいる場合には、注意が必要です。

  • 経験・知識不問
  • 誰でも簡単にできる仕事
  • マニュアルどおりに作業すればよい
  • 入社後数日で習得可能
  • 単純な入力作業が中心
  • 店舗での接客、品出し、清掃等が中心
  • 工場内での製造、検品、梱包作業が中心

これらの記載だけを見ると、大学等で修得した専門知識や、一定期間の実務経験を必要としない業務と判断される可能性があります。

一方、職種名が「営業」「事務」「企画」「マーケティング」「エンジニア」などであっても、実際の業務が定型的、補助的又は反復的な作業にとどまる場合には、必ずしも「技術・人文知識・国際業務」に該当するとは限りません。


日本人従業員の採用基準との整合性も重要

今回の記載でもう一つ重要なのは、同じ業務に従事している日本人従業員に、どのような学歴や経験を求めているかという点です。

例えば、日本人については高卒、未経験で採用し、専門的な教育を受けていない従業員が一般的に担当している業務であるにもかかわらず、外国人を採用する場面だけ「大学で学んだ専門知識を必要とする業務です」と説明しても、説得力を欠くことがあります。

もちろん、日本人について法令上の学歴要件が課されるわけではありません。

しかし、同じ業務を担当する日本人の採用基準や経歴は、その業務が客観的に見て専門知識を必要とするものであるかを判断するための材料となります。

したがって、外国人材の在留資格申請に当たっては、次の点を整理しておく必要があります。

  • 同じ職種の日本人従業員は、どのような学歴や職歴を有しているか
  • 日本人従業員の求人では、どのような採用条件を設けているか
  • 担当業務の遂行に、どのような専門知識が必要となるか
  • 専門知識を有しない人が短期間で習得できる業務ではないことを説明できるか
  • 外国人本人の専攻科目又は職歴が、担当業務とどのように関連しているか

求人票と在留資格申請書類の内容を一致させる

実務上、特に注意したいのが、求人票と在留資格申請書類との不整合です。

例えば、求人票には「未経験歓迎・簡単な事務作業」と記載している一方、在留資格申請時の理由書には「経営学及び国際取引に関する高度な専門知識を用いる業務」と記載している場合、両者の説明が一致していません。

また、求人サイト、企業の採用ページ、ハローワークの求人票、雇用契約書、労働条件通知書及び在留資格申請時の職務内容説明書について、業務内容がそれぞれ異なっているケースもあります。

審査では、申請時に提出した書類だけでなく、企業の事業内容、採用情報、組織体制等を踏まえて、業務の実態が確認されることがあります。
そのため、人事担当者は、求人を公開する段階から、在留資格上の説明との整合性を意識しておく必要があります。
ただし、在留資格を取得しやすくするために、求人票上の業務を実態以上に専門的に表現することは適切ではありません。必要なのは、実際の業務内容を正確に整理し、その業務に必要な知識や判断の内容を具体的に説明することです。


「専門性」は職種名ではなく、具体的な職務内容で説明する

例えば、「営業職」と記載するだけでは、専門性の有無は判断できません。

営業職の中にも、電話による案内、店頭販売、定型的な受注処理等を中心とする業務もあれば、市場分析、販売戦略の立案、海外取引先との交渉、契約条件の調整等を行う業務もあります。

同様に、「事務職」という名称であっても、単純なデータ入力を行う業務と、会計、貿易、法務、人事制度等に関する専門知識を用いて判断を行う業務とでは、在留資格上の評価が異なります。

在留資格申請に当たっては、次のような点を具体的に説明することが重要です。

  • どのような情報を分析するのか
  • どのような判断を行うのか
  • どのような企画又は提案を行うのか
  • 業務遂行にどの分野の知識が必要となるのか
  • 本人が大学等で学んだ内容をどの場面で活用するのか
  • 定型作業ではなく、専門的判断を要する部分はどこか

単に「専門的な業務です」「大学で学んだ知識を生かします」と記載するだけではなく、日常的な業務の内容に落とし込んで説明する必要があります。


人事担当者が採用前に確認すべきこと

「技術・人文知識・国際業務」で外国人材を採用する場合には、内定後に在留資格を検討するのではなく、募集職種を設計する段階から確認を行うことが望まれます。

特に、次の点は採用前に確認しておく必要があります。

  1. 担当させる業務は、専門的な技術又は知識を必要とするものか
  2. 単純作業や反復訓練によって習得可能な業務が中心になっていないか
  3. 外国人本人の学歴又は職歴と、担当業務との間に関連性があるか
  4. 同じ業務に従事する日本人の採用基準と矛盾していないか
  5. 求人票、雇用契約書及び申請書類の記載が一致しているか
  6. 入社後、申請時に説明した業務に実際に従事させることができるか

これらを事前に確認しないまま採用を進めると、在留資格変更許可申請や在留資格認定証明書交付申請が不許可となるだけでなく、採用後に予定していた業務へ配置できないという問題が生じる可能性があります。


まとめ

「未経験可、すぐに慣れます」という求人表現は、それ自体が直ちに不許可の理由となるものではありません。
しかし、その表現が、専門的な知識を必要とせず、短期間の訓練によって誰でも従事できる業務であることを示している場合には、「技術・人文知識・国際業務」の対象外と判断される可能性があります。

外国人材の採用では、候補者の学歴や職歴だけに注目するのではなく、企業側が用意する職務自体が、在留資格上求められる専門性を備えているかを確認することが不可欠です。

採用後に在留資格との不一致が判明することのないよう、求人票を作成する段階から、職務内容、採用基準及び申請時の説明を一体的に整理しておくことが重要です。